第2話 後編
なんと、私の指輪が見当たらなくなったのだ。どこ探してもないことに気づく。
「どうしてないのよー!」
私は可奈に電話をして家に来てもらった。もしかして見落としてる可能性もある。
「ねぇ、その指輪誰かに見せた?例えば元彼とかに?!」
「いや、あいつには見せてない!あの指輪を知っているのは私と可奈と・・・えっ・・・?」
「まさか渡辺さん!?でも待って渡辺さん車椅子だよそんな動けないわよ」
「ちょっと待って絵里本当に渡辺さんは1人で動けないの?」
「そのはずだよだって事故で両足動かなくなったって!」
「ちょっと調べてくる私!」
「ちょっと可奈!そんなのあり得ないよ!」
可奈は走って渡辺という男について調べた。もう時間もかかってしまうことから
可奈は探偵にお願いすることにした。
すると、2週間後作成された報告書に目を通すと驚愕な事実が書かれていた。
渡辺は20年前の元宝石強盗の常習犯で、逃げたときにバイクと接触してしまい両足に大怪我する。ただ足については当時の資料が不足しており、現在も歩けるような足かどうかは断定出来ない。
現在は鉛筆画家として活躍している。何度も賞をとっており、それで生活している。
この事実を知った私はあることをすると決めた。
「絵里どうするの?」
「・・・信じられない。あの人の心が温かったとか、足になるとか。私本当男の見る目ない。でも確信したあの人きっと歩けるわ」
「絵里もう関わるのをやめたら?」
「そういう訳にいかない母の形見の指輪をそのままにしておけない!」
「解った。私ももっと詳しく調べておく」
「ごめん可奈お願いします」
◆◆◆
私は夜に渡辺と会う事にした。
「どうかした?」
「ちょっと付き合ってほしいの」
私は車椅子を押して
電車が通り過ぎ遮断機が上がったあと、車椅子押して片方をタイヤをレールにはめた。
私は無言のまま遮断機の外へ出た。
渡辺は私の顔をじっと見つめる。
「本当は歩けるんでしょ!」
渡辺は無言のまま、ひたすら手で車椅子のタイヤを回し抜けようとするが抜けない。
警報機がまた鳴り始めた。渡辺は必死でそこから動こうともするも車椅子はそこから動くことは無かった。
そして電車が近づいて来る。警笛音が鳴り響く。
「なんで!歩いて動けるんでしょ!早く動きなよ!」
すると渡辺は自分の正体がすべて絵里は知っていると悟ったのか、手を動かすのを辞めた。
「何でよ!死ぬわよ!」
しかし渡辺の顔は歪むことなく覚悟を決めた顔で絵里の顔を見つめる。
するとものすごい警笛音とともに渡辺は電車に跳ねられ、車椅子が宙を舞う。
「う、嘘ー!」
その後病院に行くものの、渡辺の死は知らされ、防犯カメラの映像から絵里も警察に逮捕された。
ここで絵里は刑事に驚愕な事実を聞かされる事となる。
「動機は解った。でもあなたは真実を履き違えている」
「どういうことですか!」
「まずあなたが仰ってる指輪を盗んだのはあなたの元彼です。逮捕した元彼の供述によると合鍵を作っていたそうですね。その事実も絵里さんも知らなかったでしょう。それで金になるものを偶然見つけて盗んだのがあなたの指輪。だが質屋からの連絡で明らかに言動がおかしいことから通報し、逮捕に至りました。今回の渡辺さんは実はその指輪を見て実は偽物と気づいたんですよ」
そう言い、刑事は指輪を机に差し出す。
「そんな!だってあれは母が私にくれた指輪ですよ!」
「お母さんその指輪どこで買ってきましたか?」
「海外旅行行ったときです」
「ではその時に偽物を買ってきてしまったんですね」
「母が偽物を?!」
「そういう意味ではありません。決してお母さんが偽物をわざわざ買ったという意味ではありません。本物と思い込んで買った事だと言ってるんです。それで渡辺さんは全く同じ本物の指輪をあなたにあとで何らかの形で渡したかったのでしょう。証拠はこの発注書です」
泣き崩れる絵里ようやく自分はとんでもない大間違いを犯した事に気づく。
「確かに渡辺は過去に宝石強盗の常習犯でした。20年前の当時の資料からするとお金に困っていた。住所すらなくなってしまっている渡辺は、どこも受け入れてくれる会社もなく生きるためにやったと供述しています」
「では!なぜ私が車椅子ではめこんだとき何も言わなかったのですか!」
「この絵知ってますね?」
刑事が差し出されたのはあのとき絵里が買った絵だった。
「これは、私が買った絵です」
「渡辺は自分がかつて強盗の犯人であったことをこの絵を通じて知ったと悟られたと思ったんでしょうね。
この絵は実は昔、渡辺が襲ったときの強盗の場所です。
ここでバイクとの接触事故により自分の足が動けなくなり、車椅子生活になった」
渡辺は強盗犯として逮捕され出所後は自分の生活を確立するため鉛筆画家への道に進み、その生活費を稼ぐ事が出来るようになるところまで刑事は絵里に話した。
「そんな・・・」
絵里はもう涙が止まらず、ハンカチで顔を拭くもその溢れる涙は止まらなかった。
「ここからは推察にはなるのですが、渡辺は自分が強盗の犯人だったことを悔やんでいたんでしょうね。
だからそのためならどんな罰も受けると思い、今回の事も何も告げずようやくこれで罪が滅ぼせるならば。と、考えていたかもしれません」
刑事はそう言い、絵里の前から去った。
しかし、この事実を知ったとき絵里の行動は結果的には犯罪ですが、一方的に責められるものなのでしょうか?
ただ、1つ事実として言えるのは渡辺は絵里を本気で愛していた。
絵里もまた渡辺を愛していた。犯罪者という肩書が渡辺になかったらきっとここまでの事件にはならなかっただろう。
ー完ー
私の彼は元宝石強盗! katsumi1979 @katsumi2003
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