「記憶」は消える。「奇妙な味」は余韻を残す。

食事をすると記憶を消せるレストラン。というのは、第1話の「記憶を食べるレストラン」だけのアイデアかと思いきや、この掌編集すべてがこのアイデアひとつで支えられている。しかしながら、各作品のオチは多様で、一品一品に、不思議な後味を残す滋味がしたたる。「デリバリーランチ」なんかサンドイッチの話なのにソースはこってり、「知らない幸せ」のようにすこし爽やかな柑橘のアクセントが効いたものもある。なぜこんな感覚に染みるような印象を残すのだろうかというと、食に関連した話だというだけでなく、現実離れした題材ながら、本作の世界観の軸にあるのが、社会生活や人間関係といったわたしたちの日常の本質に迫るものだからだろう。

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