このイケメン海賊(耳と尻尾つき)に、貴女も“奪われ”ないようご注意を♡

ファンタジー海賊といえば奪ってなんぼ、冒険してなんぼ!そんなセオリーから外れることのない楽しい海賊たちの船長ラギウスと、彼に『奪われてしまった』聖女メルヴィオラ。脳内アニメ再生余裕なドタバタなはじまりが、あっという間に彼女と読者を大海原へと連れ出してしまいます。

メルヴィオラの聖女としての務めは、各地にある不思議な樹に祈りを捧げる儀式をこなすこと。決まりきった使命に辟易としていた彼女ですが、まさかの海賊に攫われるというヘビー級の冒険をはじめることになります。しかもラギウスは狼になってしまう自分の身体を治してほしいがため、メルヴィオラの持つ癒しの力=涙を狙っています。こぼれ落ちた涙が真珠になるという大変美しい設定なのに、彼はお構いなくぺろぺろぺろぺろ。しかし同時にきちんと彼女を女として見ている部分もあり、慣れない異性からの攻めの連続に聖女さまはへろへろです。

そんなフリーダムな船長が率いる海賊たちもまたフリーダムな面々ばかり。毒舌な風の精霊、心はヲトメなゴリマッチョ、我関せずな本の虫……。神殿で大事に育てられてきた“箱入り”のメルヴィオラにはすべてが驚きと危険に満ちていましたが、外の風に触れるうちに彼女もまた人生の視野を広げていくのです。癒しの力を持つ聖女の秘密は歴史的にも読み応えがあるパートなので、恋愛だけじゃ物足りないファンタジー好きさんにもぴったり。

ケンカばかりしていた二人がだんだんとお互いを意識し、やがて離れ難い存在へと変化していく過程がお見事。簡単に結ばれないのもまたよいスパイスとなり、ハッピーエンドへと一気に雪崩れ込むラストは爽快です。そうそうこれこれ!!これを待ってました、ありがとう!!といつまでも拍手したくなります。

他の作品もそうですが、とても情景描写が美しい作者さんです。ファンタジーシーンでも恋愛シーンでも、甘く蕩けるような、そして透き通るような美しさが散りばめられているのです。まるで読む宝石のよう!

楽しく笑えて、恋心にキュンとして、そしてたくさんの元気をもらえる素敵な物語。寒い冬だからこそ、あなたも海賊船エルフィリーザ号に乗って彼らとの冒険に出かけてはいかがでしょうか♡

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