合格発表にて

 さて、面接も含め、全ての入試が終わり、早いもので今日が合格発表日である。


「いやー、ドキドキするよ…」


 8時50分。ウェブ上での合格発表まで残り10分を切った。俺たち3人の前には高校のホームページを開いたパソコンがあった。手元にはパスワードの書かれた紙を置いていて、すぐにでも入力が出来るようになっている。


「なんで一番おねぇが緊張してるのさ」

「だ、だってぇ…」


 七海はうろうろとリビングを歩き回っていて、終始落ち着かない様子である。京の言葉に反論しているがその語気は弱い。でも京も、持っている紙が少し震えていた。そりゃ緊張していないわけないか。俺だって叫びたいぐらい緊張している。今すぐにでも叫んで走り回ってジャンプとかしたい。どうにかして、この体の中にあるこの行きどころのないもやもやしたものを吐き出したい。


 「ほら、そろそろだぞ」


 欲求を抑え、七海達を宥めているうちに時計はもう9時を指そうとしていた。

 しっかりと誤字が無いか確認しながら慎重にパスワードを入力していく。ドキドキと自分の心臓の音が聞こえて来る。

 そしてパスワードを全て打ち終わり、最後の確認を終える頃には時計の針は9時を少し過ぎていた。


「じゃあ、いくね」

「うん…」

「…」


 『次へ』のボタンを押し、ブラウザはロード状態になる。少しの焦らし時間の後、ブラウザが読み込まれる。読み込まれた画面の中央には、『合格』の文字ともに桜のスタンプが表示された。


「やったー!」


 そう最初に叫んだのは七海だった。俺は興奮のあまり一瞬京に抱き着きそうになってしまったが、それよりも先に七海は京に突撃していった。京は少し困った顔をしているが、瞳は潤んで目尻には涙を湛えていた。うん。本当に受かって良かった。来年からは京がうちの高校に一緒に通うのか。

 そんな感慨にふけりながら二人を見ていると、少し落ち着いたのか、二人は一緒になってこちらに振り向いた。と思うと、すぐに二人で内緒にするように何か喋り始めた。京の顔は興奮のせいか少し赤くなっている。


「あきと!」


 話し終えたのか、七海はこちらの方をまた振り向くと、こっちにこいと手招きをしてきた。京は珍しく、耳まで赤くして少し俯いている。一体どうしたのだろうか。

 俺は言われたというか、七海の意思のまま近づくと、七海が横に捌けて京が俺の正面に出てくる。すると間もなく、ポスッという音と共に京が俺の胸に倒れて来た。


「え、えっと…」

「…」


 そしてその体勢のまま動かない。動かないし、動けない。


「えっと、おにぃ…。えっとね…」


 俺は京の二の句をジッと待つ。京は覚悟を決めたように勢いよくこちらを見上げた。


「えっと、勉強を教えてくれてありがとね。うん。本当に感謝してる。ありがと。そっ、それだけっ!」


 それだけ言うと直ぐに七海の方へ行ってしまった。京がこのまま大きくなっていって、いつかは出て行ってしまうと考えると、俺も少しウルッと来てしまう。親父たちもこんな気持ちだったのだろうか。


「…おねぇもありがとね」

「うん!」


 京はそう言ってまたパソコンの前に戻って行った。


「…この書類をダウンロードして、後はママとかパパに相談しながら書けば良いよね?」


 そして、誤魔化すためか、必要な処理について話し出した。

 俺と七海は顔を見合わせて、お互い少し微笑んだあと、京に返事をした。


「うん!それで良いと思うよ!」

「とりあえず親父達には京の合格を教えてあげないとね」

「…うん!」

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学校では無口な彼女と学校でもイチャイチャする話 ウパ戌 @wopainu

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