解決編
大急ぎで開けたのは弟の部屋だった。
そこでは、スプーンを持ったままの弟の前に兄が仁王立ちしていた。
なぜ兄がここに?
意外な光景に驚いて第一声を逃した僕より先に、兄が話しだした。
「サトル、お前なあ。人の物を盗っていいと思ってんのか?」
兄は僕より先に弟を叱っていた。
「いや、ミツル兄ちゃんがプリンを諦めたというか……」
「諦めてない!」
僕は思わず割って入った。
「俺は至福の時のために万全の準備をしていただけだ!」
「な、ミツルは取って置いただけなんだよ。しかもお前は嘘をついただろ」
長兄の叱責に、弟はバツの悪そうな顔をしてうつむいた。
兄には全て分かっているのか?
兄は僕に説明するように続けた。
「ミツルが席を外したタイミングで、俺は飲み物を取りに冷蔵庫に行った。その時はまだプリンはあったんだ。俺が階段を上がっている時にインターフォンが鳴ってたな。たぶん宅配便がなんかだと思うけど、サトル、お前は誰もいなくなったことを良いことにプリンを奪取したな。そしてダッシュで自分の部屋にプリンを隠し置いて、何食わぬ顔で一階に戻ったんだろう」
「ご丁寧にスプーンまで持ってな」
僕はふつふつと湧き上がる怒りを抑えながら、嫌味ったらしく付け加えた。
「俺、足速いからさ」
弟が口を尖らせながら言う。
「そういうことを言ってるんじゃない!」
僕と兄は同時に怒鳴った。
「おーい、あんたたちー。良い物あるからおいでー」
ちょうど良いタイミングで、母の呼ぶ声がした。
僕と兄は目配せした後、とりあえず一階に行くことにした。
「で、このプリンは俺の物ってことでいい?」
弟が何か言ったので、僕は弟の頭を軽くはたいた。
僕が奪還したプリンと共に一階に降りると、ダイニングには焼き立てのパンと、あの高級プリンが人数分並べられていた。
「母さん、これどうしたの?」
僕はプリンを指して尋ねると、どうやら先程の宅配便の中身がその高級プリンだったらしい。
「お父さんの会社の人がまた送ってくれたのよー。ご家族が多いからみんなで食べて下さいって。ありがたいねー」
母は誰よりも早くプリンに手を付けている。
「ほれ、喧嘩する前に食べちゃいなさい。今度は数がちょうどだから」
僕は兄と弟を交互に見る。
二人も僕を見た。
弟は小さく「ごめん」と呟いた。
「よし、食べるか。な、ミツル、サトル!」
日曜日のまったりとしたおやつの時間が始まった。
プリンを獲ったのは誰だ 静嶺 伊寿実 @shizumine_izumi
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