第22話 まめむ

「お芝居を観に行きたい」

 あなたは時々思い出したように話し始める。


「あら、どしたかね?」

「最近全然観に行ってない。最後に行ったのはチーム・ナックスのだよ。あれからずいぶん経ってるよ」

 なにがどうなって行きたくなったのかはわからないけれど。


「そうだねえ、で? 何を見に行きますの?」


「全部」


「まじか。では検索しましょう」


 年末までにあるお芝居をピックアップしてみせてくれる。


「どれがいいの?」

「全部!」


「うーん、チケット取れるかなぁ? やってみよう」


「12月のって向井理のやつ!」

「ええ、そうすね」

「わたしが好きな人じゃん! ほんとにすごいよ、八頭身よ。顔ちっちゃい、身体はスラーっとしてて」


「ああ、うん、そう。まあ一応チケット取れるかみてみるけどって取れそうだわ」

「やったじゃん、すごいじゃん! ホントにね、すごいんだよ、スラーっとしてて八頭身で。生で見たら化け物みたいに見えるんじゃないだろうか?」

「いや、それみたいの? 見たくないの?」


「みたいよ、そりゃあみたいよ!」


「そう。まあ人気のお芝居だろうから席がうしろーのほうだよ、きっと」

「え?」


「まあ見られないことはないだろうけどまめむくらいだと思うよ」

「と、おっしゃいますと?」


「向井まめむくらいの大きさでしか見られないってことよ」


「なによ、まめむって」


「そのくらいの気持ちで行ったら大きく見えたら嬉しいでしょう?」


「いや、まあそうですけど。まめむってどうなの?」


 いつものように変なこと言ってる。


 いつものように笑いあう。


 いつものように


 わたしはあなたのことが好き。

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