神憑った「比喩」と「作劇法」で、胸が抉られました。

少女の悲恋の物語……と、一言では片付けられない作品。読了後には、その余韻も相まって、名状しがたい遣る瀬なさに、ただただ茫然とすることになりました。

とにかく、比喩表現と作劇法が秀逸で魅力的! ドキリとさせられるタイトルが入り口となっている本作ですが、始まりこそ淡いものだったはずの恋愛が、効果的な表現によってどこか気味悪く醜怪なものへと染め上げられていく様子は圧巻でした。

追い打ちをかけるかのように、ストーリー上に浮きあがって来る「自分」との問答。「外殻で着飾った上辺の自分」と「内なる生々しい自分」の葛藤は、主人公が思春期であることも相まって、リアリティをもって読者を惹きつけます。

――いえ、深く唸らされました。だって、蝶、夢、鏡……そうした幻影的なものが、多分に使われている……それなのに、逆説的にリアリティが増している。これは、一体全体どういうことなんだと、作者様の力量の高さに圧倒されるほかありませんでした。

おそらく、冒頭で蝶が舞った瞬間から、私たちは釣舟草さんの魔法にかかってしまっていたのでしょう。

だからこそ、自分が残せる言葉はただ一つ。

「素晴らしい作品をありがとうございました!」

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寄生

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