少女の悲恋の物語……と、一言では片付けられない作品。読了後には、その余韻も相まって、名状しがたい遣る瀬なさに、ただただ茫然とすることになりました。
とにかく、比喩表現と作劇法が秀逸で魅力的! ドキリとさせられるタイトルが入り口となっている本作ですが、始まりこそ淡いものだったはずの恋愛が、効果的な表現によってどこか気味悪く醜怪なものへと染め上げられていく様子は圧巻でした。
追い打ちをかけるかのように、ストーリー上に浮きあがって来る「自分」との問答。「外殻で着飾った上辺の自分」と「内なる生々しい自分」の葛藤は、主人公が思春期であることも相まって、リアリティをもって読者を惹きつけます。
――いえ、深く唸らされました。だって、蝶、夢、鏡……そうした幻影的なものが、多分に使われている……それなのに、逆説的にリアリティが増している。これは、一体全体どういうことなんだと、作者様の力量の高さに圧倒されるほかありませんでした。
おそらく、冒頭で蝶が舞った瞬間から、私たちは釣舟草さんの魔法にかかってしまっていたのでしょう。
だからこそ、自分が残せる言葉はただ一つ。
「素晴らしい作品をありがとうございました!」
拝読して、これは感想書きにくいぞと頭悩ましてるうちに日が落ち、結局感想として適切な言葉が見つかりませんでした。
なので、レビューにすることにしました。(飛躍
これは、世の中の“普通”に迎合出来なかった少女の物語です。
彼女はある同級生に恋をするのですが、自分のありようと向き合った結果恋を捨て、都合のいい、発達に遅れのある男子と密かに付き合い、自らの砂城を築きます。
そんなある時、憧れの少年と同じクラス、席も隣同士となるのですが、とある事件が起こります。
自らをセミの幼虫に例えた少女の、耽美なまでの独白。
女子高生の恋の物語と言えば聞こえはいいが、描かれるのは青春のキラキラではなく、整理しきれない、まるでコールタールのような感情。
黒い蜜を吸った幼虫はサナギになり、やがて……
《これは、臆病で傲慢な少女だった私の、痛々しい恋の後悔の物語。》
これは懺悔か。それとも独善的な回想か。あるいは……
感想を述べるに難しい、深い奥深い世界。
ぜひその目で確かめてください。