アイデンティティを巡る問いを内包した、エンタメ時代活劇。

妖を視ることの出来る少女と、妖を斬る半死半生の侍。
ユニークな取り合わせの二人が、妖に関わる事件を解決する本作は、前作の明るさやほのぼのした人情を継承しつつも「自分とは何者なのか」というアイデンティティを巡る現代的なテーマ性に深く切り込んで、非常に読み応えがありました。
特に後半に入ってからの登場人物の心情描写が細やかで、現代人にも通じるものがあり、心理小説としてもたいへん面白かったです。

物語のテーマは重いですが、クライマックスの活劇のドキドキハラハラや、主人公の夜四郎の格好良さ、もう一人の主人公であるおたまちゃんの健気な可愛らしさ、登場人物たちのテンポの良い会話の妙など、エンタメとしても魅力的で、読んでいてとても楽しかったです。

第三弾が書かれるのを心待ちにしています。