本編にはないトゥルーエンドを迎え、その後を歩むはタイトル未定の物語
緒薔薇と同棲する約束を交わしてから3日が経った今日、【そして誰も……】の本編にはない新たなエンディングが追加された。
「「「「――――――――――――」」」」
それは、全員生還ルート。誰一人として消えず、死が迫っていたことすら知らなかった――物語としてはつまらない平和な終わり方。
そのつまらない平和なエンディングを無事に迎えられ、取り敢えずは一安心といったところか。
バス停へと歩を進める道中、前を行く緒薔薇以外のメンバーの足取りは羽がついているかのように軽く、元気で楽しそうで見ていると感慨深い気持ちになってしまう。
ギャラリーが追加されましたといつ出てきてもおかしくない、素敵な絵。どことなく快晴な空も祝福してくれているような気がする。
「こんなシナリオになるなんて、ここに来る前は想像すらしていなかったわ」
俺の隣を歩く緒薔薇が前にいる面々に視線を送りながら、ボストンバッグのチャックを開けた。
中で鋭く光を反射させている刃物。緒薔薇はその柄を右手で握り、「フフフ」と怪しく笑う。
「なんの危機感もなく当たり前のように家に帰れると思っている皆が絶望する表情……今からでも拝めるかしら?」
「ちょちょちょ、ダメに決まってるだろ。ここで罪を犯して捕まろうもんなら、それは間接的に俺との約束を反故したことになる。そいつはポリシーに反するんじゃないのか?」
「そっちの心配をするのね……あなたも大概じゃない」
「人殺しがいけないのは当たり前だからな。言う必要もなかっただけだ」
「そ。まあいいわ……どっちにしろ、私の中であなたがおかしいことは変わらないから」
「なんでだよ」
「一般的な感覚であれば、人を殺そうと企んでいた人間に同棲を持ちかけたりはしないから。あなたも十分狂っているわ」
「え――ちょ、それで終わりッ⁉」
言いたいことは言ったとでも言うように、緒薔薇は走りだし他の皆の元に。腹の中を知っているだけに、違和感なく溶け込めているのが恐ろしく凄い。
「彼女とのラブコメ、一筋縄ではいきそうにないどころか想像すら難しいが……頑張ろ」
一人になった俺は足を止め、天を仰ぐ。
【そして誰も……】の真のトゥルーエンドを迎えたわけだが……ここから先、その後の物語は俺も知らない未知の領域だ。
どうなっていくのか楽しみでもあり不安でもある。先の結果が視えないんだからそれこそ当たり前なのだが……ま、良い物語が紡げたらなと、そう心から思っている。
「――なにちんたらしてるの達敏君! 置いてっちゃうわよ!」
「おう! 今行く!」
トゥルーエンド 『当たり前の平和』
アフターストーリー 『タイトル未定』
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