誰も死なずに済んだ夜
「……………………」
呆気に取られている様子の緒薔薇が2、3回ほど目を瞬かせた。
「ごめんなさい。いまいち意味がわからないのだけど、ラブコメというのはラブコメディーの略称で合っているわよね?」
「ああ。合ってるぞ」
「そ。本来であれば求める相手を盛大に間違っていると忠告したいところだけど、勝負に敗れた私がとやかく言う資格はないから『お好きにどうぞ』とだけ……ただ、ラブコメと言われても具体的になにをすればいいのか、もしくはなにをさせられるのかがまるで見当つかないから、できればここで詳しく教えてほしいわね」
「教えるもなにも、指示通りに動くだけじゃ機械的感が否めないだろ? 要求しておいてあれだけど、そこら辺は緒薔薇の自由にしてくれていい」
「自由にと言われても…………まあいいわ。良くわからないけれど、あなたがそれでいいなら別に」
「あ、ただラブコメに適した環境作りはするつもりでいるからよろしく」
「また意味のわからないことを……環境作りとはなに?」
「フッフッフぅ……それはだなぁ」
「もったいっぶらずに早く教えなさい」
「あ、すいません」
緒薔薇の刃物に負けず劣らずな視線を受け俺はすかさず頭を下げ、流れで続きを発する。
「俺と同棲してください」
「…………どう、せい?」
黒く長い
「…………プフッ、クフフフフッ――フヒヒヒヒヒヒッ」
彼女に笑われてしまうのも仕方がない。ぶっとんだ内容であったことは自覚がある。クセのある笑い方はご愛敬だ。
「――はぁーしてやられたわ。まさか私との同棲がお願いだったなんて――フフッ、つまらない人間だと思っていたけれど、中々に面白いのね達敏君って。気は確か?」
ひとしきり笑った彼女は一度、すぅと息を整えてから
「殺人を犯そうとしていた緒薔薇に正気を疑われるとは思ってもみなかったよ」
「フフッ、切り返しが上手いこと」
緒薔薇の表情が暗い室内の時よりも心なしか和んでいるように見え、俺の口元もついつい緩んでしまう。
「いいわ、私で良ければ同棲しましょ」
「……本当にいいのか?」
「いいわ。飽きたら殺すけど」
「ちょ、殺さずの誓いがあるのも忘れないでくれよ!」
「フフ、冗談よ。断れる立場にないというのもそうだけど、純粋に達敏君に興味が湧いてきたの……精々私を楽しませてね? 達敏君」
「もちろん!」
俺が自信たっぷりに頷くと緒薔薇は満足したように微笑み、刃物を回収して部屋を後にしようとする。
「……〝殺さなければなにをしたっていいのよね?〟」
「――え?」
横を通る過ぎる際、確かに彼女は小声で呟いた。ただ内容までは聞き取れず、俺が聞き返しても反応は得られなかった。
…………なんて言ったんだろう?
窓を叩く雨風が勢いを増した。
――――――――――――
どうも、深谷花びら大回転で――★くれやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
以上でーす
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