大胆な構成と血飛沫を引っ提げて帰ってきた『シンセシス』!!

すごい楽しく読ませて頂きました!!


まず、ストーリー展開が面白かった!
第√-1話を経て後半に入ったタイミングで、一気にバイオレンスアクションの方向に舵を切っていったのが、大胆で好きでした。
ジャンルは全然違うのですが、ちょっと『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の斬新さと似たところを感じましたね!


前半のテイストは前作と似ていて、(もちろんこの段階から不穏さは散りばめられているのですが)メインはアーティストや大学生の青春群像劇という感じでした。

ロックフェス「THE DEAD」でのアーティストたちの競演、そして主人公の歌姫の鮮烈なカムバックが前半のクライマックスだったのですが、ライブシーンの迫力は前作よりパワーアップしている印象を受けました。パフォーマンス、演奏される曲の内容、そしてアーティストたちの人間模様が重層的にリンクして、ストーリーとして引き込まれました!


後半に突入して、ジャンルが変わってからも、スリリングで良かったです!

アーティストたちが当たり前のように未来予知能力を使って戦い始めるし、音楽レーベルは当たり前のように裏社会のヒットマンを雇うので、そこで「ああ、リアリティラインが変わったな」と感じたというか、ジャンルの変化にアジャストできる感じがありました。

実は自分自身は(次回作にあたる)『オオカミビト』を先に読んだのですが、本作のテンポが良く筋が通ったアクション・バイオレンスシーン、それに敵キャラクターのダークで説得力のある造形に、『オオカミビト』の萌芽を感じました。めっちゃ堪能しました!


前作からの続投組も、新キャラクター達も、みんな魅力的でしたね!

ヒロインのテトラは過去のトラウマから複数の人格を持つに至ったロックスターで、複雑な魅力を放っていました。最終決戦に向かうまでの流れが美しかったです!
その恋人であるヒデアキは、他の主人公格のキャラクターに比べるとナイーブな印象がありました(例えばユーヒチと並ぶと、なんかユーヒチの方が年上な感じがしてしまうんですよね)が、彼のピュアで無条件な献身というのは、前作『感傷的なシンセシス』で描かれた愛の形と通ずるものがあるのかなと思いました。

前作の敵キャラだったトワとレインも妖しい魅力を放っていて、前作時点で好きだったんですけど、やっぱり好きだなーと思いながら読んでいました。

あと個人的に良いなと思ったのはキョウカでした。意識の高さと、その裏返しの弱さが人間臭くて、ヒーロー然としたキャラクターが多い本作の中で、良いコントラストを生み出していたと思いました。


めちゃくちゃ楽しい作品に出会えて良かったです!!

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