本作品は同作者による長編小説『感傷的なシンセシス』の直系の続編である。時間軸的にも続いているし、設定も継承されており、舞台となっている世界も同じで、だいたいの登場人物が引き続き登場する。従って、本レビューの筆者としては、正直なところ『感傷的なシンセシス』を読了したのちにこの作品に進むことをお勧めしたい。
だがその上で、なおこの作品は同時に間違いなく完全な新作としての位置づけにある。なんとなれば、「主人公の交代」が行われているからである。その作品のコンテンツとしての力が強力であればあるほどに悪魔的に難易度を増してしまう、あの「主人公の交代」が、である。
ネタバレをしたくないので、結論だけを書こう。この作品は、その難業に、その偉業に、成功している。前作の主人公に負けず、そして肩を並べることのできる主人公像の構築に、だ。ついでに言えば、前作の悪役と並び立ち、ある意味では対抗株となる悪役の創造にさえも、成功している。
過去の登場人物たちは魅力を増し、新たな登場人物たちも物語に新たな彩りを添える。前作『感傷的なシンセシス』に魅力を感じた人なら、続けて本作品に進まずに於くべき理由は、存在しない。是非にも続けてこの世界にどっぷりと浸ってみることを、私は推して止まないのである。