最終話 私はそれをする

 やればできてしまうものだった。

 ロッカーの上にぐちゃぐちゃに並べられたペットボトル水槽、春はもうとっくに過ぎた放課後の蒸し暑い教室、もうすぐポイされちゃう魚たち。

 理科室の備品のピンセットで、水を貯めた掃除用のバケツに移動する。水草の中に隠れようとする彼ら彼女らを引っ張り出す。

 箱が破壊される。

 笑みを浮かべた頬を汗が何滴も滑り落ちメダカたちがぎゅうぎゅうに押し詰められ既に生ぬるくなったバケツの中に、あるいは薄っすらと弧を描いた口腔内に消えていった。

 忘れてはならないのは各クラスにある学級文庫の上の大きな水槽、すっかり余り物扱いのあれも8クラス分どうにかして運び出さなければならない。


 集めたメダカは学校の近所の川に流すと決めていた。


 ここの水質は教材用に買ったメダカには合わないだろうから多分ほとんどが死んでしまうのではないだろうか。

 喉の奥でせき止めておかないと笑い声が溢れてしまいそうで大変で、最後のバケツを流し終えてついに堪えられなくなってしまう。

 川の水は川底が見えるくらい透明で気がつくとあれだけ沢山いたメダカは一匹もいなくなっていた。






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君ユリイカ 梦吊伽 @murasaki_umagoyashi

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