第6話 いぬだらけ

 5年生の全クラスのメダカが一斉に消えてしまった。

 年相応のユーモアを持っている子は自分のメダカに名前を付けたりしていたけれどさすがに観察用の魚が消えたくらいで泣く子はいなかった、もう高学年だし。でも流石に驚いている子はいたよ、だって昨日までそこにあったのに……一日で8クラス全ての水槽からいなくなったんだから。

 でもそれは世界を破壊したってことじゃない……パパは前に言っていたよね、メダカは人間なんだって。水槽は箱で、それを破壊すれば世界は壊れるんでしょう?

 世界なんて壊れちゃえばいいんだよ。

 意味分かんないお父さんも、長袖ばかり買ってくるパパの家族も皆いなくなっちゃえばいいんだよ。


 曽根崎 美園は自分が今どんな顔をして喋っているか不安だった。眼尻が垂れ下がり口の端を大きく吊り上げた可笑しくてたまらないとでもいうような度を越した表情になっていないだろうか。気を抜くと、ふっ、くくっ、という気味の悪い笑い声が漏れてしまいそうで仕方なかったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る