第5話 だから私は

 火花散る 私の体に咲く花火 いたわるは風の 撫でる手のみかな


 これは私が夏の国語の授業で書いた短歌。書いて、没にされた俳句。壁に取り付けられた扇風機の巻き起こす風が直当たりする席で書き上げられ、夕暮れの職員室のゴミ箱に捨てられた。

 「字余りすぎる」

 学校の教育というのは結構雑にできていて、私も含め幾人かの生徒はこういう指摘を受けて修正を加える。だけど私はこのとき自分の身を、歯を食いしばって切り落とした肉片を踏み躙られたような感覚―――かと言ってそれは着火剤で火を付けたような瞬間的なものではなく―――皮膚や内臓を形作る繊維の網目からどろりと沁み出るような、とにかくそんな粘性を知った。それはずっと知っていた思いだった。

 自身の血肉を捨てられた帰り道、私は貸し出された歳時記を片手に小学校高学年が考えそうな単語を慎重に選びながらありふれた幼い学生の作成した句を作っていった。再提出された俳句はどこかの賞に入選して冬までには表彰状が届くらしい、ロンTの下に咲く色取り取りの花に気づかない担任からの言葉だった。


 教室の済に置かれたメダカの水槽、踊る小さな魚たち……去年の余りのメダカはこうやって大きな水槽に移される。増えすぎてしまいそうなものなのに毎年数はあまり変わらないらしい。

 水生生物を箱の中に閉じ込めて育てる人間社会。

 

 だから、回りくどいことはもういいから、私は世界に復讐することにしたんだ。

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