最終話 新しき時代の礎として
人事に関する改革がいくつか断行された。
一番大きかったのは
上奏してきたのは曹操で、ダブついていた官位のスリム化が進められた。
中には女官に関する改革もあった。
皇后の蔡文姫が中心となり『
定員は二十四名。
普段は皇后の秘書として働きながら、歴史の編纂などを手伝う。
全国から才能あふれる女性が集められた。
初期メンバーの中には呂白の名もあった。
「どうですか、兄上。凰麟院の制服は?」
「白も官服をまとう年頃になったか。お利口さんに見える」
着物の袖口には
凰麟院の官服はやがて女子の憧れとなるだろう。
「他の二十三人とはもう会っているのか?」
「はい、どの方も賢そうです。切磋琢磨して来ます」
「白は皇后のお気に入りだからな。寵愛に甘えないようにな」
「付き合いの長さに
官服というのはダボダボしている。
以後、朝廷で呂白を見かけることがあったが、小鳥みたいにヨチヨチと歩いていた。
あいつ、いつか転ぶだろうな。
なんて思っていたら本当にバランスを崩した。
ちょうど階段を上っていた時だから抱えていた大量の巻物が宙を舞う。
「あわわわわっ⁉︎」
大急ぎで集める呂白。
しかし巻物はイジワルだから帯みたいに階段を落ちていく。
「やれやれ、助けるか」
駆けつけようとした呂青は足を止めた。
「大丈夫ですか⁉︎」
青年がやってきたのである。
中央に仕官したばかりの陸遜だった。
「あ、すみません」
「これで全部ですかね」
「はい、助かりました」
陸遜は呂白の官服をまじまじと観察する。
「その服は凰麟院の?」
「そうです! 今年から仕官しています!」
「奇遇ですね。私も今年から仕官しています」
「そうでしたか……ちなみにお名前は?」
すると廊下の向こうから声がした。
「おい、陸遜! また迷子になっているのか⁉︎ こっちだ!」
上官が手を振っている。
駆け出そうとした陸遜を呂白は呼び止めた。
「いつかお礼をしますから!」
陸遜はニコリと笑ってから去っていった。
ようやく柱の影から出た呂青は、ため息をついている妹の肩を叩く。
「ひぇっ⁉︎ 兄上⁉︎」
「どうして残念そうな顔をしているのだ?」
「いや……自分の名前を伝えられませんでした」
「そうか。なら俺から陸遜殿に話しておこうか」
「いや⁉︎ 兄上が訪ねたら陸遜殿はびっくりします!」
「白の父親が呂布だと知ったら更に驚く」
「はぅ……」
もし両手が塞がっていなかったら自分の頭をポコポコするシチュエーションだろう。
……。
…………。
それから呂白と陸遜は朝廷でよく顔を合わせた。
最初は挨拶するだけの仲だったが、休憩時間におしゃべりを楽しむようになった。
「おい、陸遜。呂布将軍の娘を口説いているのか?」
冷やかしたのは周瑜である。
「同時期に仕官しましたから。情報交換しているのです」
「その割には楽しそうだな」
一方の呂白も中々にモテたが、
「今は仕事が忙しいですから!」
といって陸遜以外の誘いは断った。
さらに数十年が流れる。
漢王朝は官吏の若返りをはかるため三公を一新した。
まず
残る一席には陸遜が名を連ねた。
陸遜、諸葛亮、司馬懿の意見はちょくちょく対立して、大舌戦となることがあった。
すると陸遜はしかめっ面で家に帰ってくる。
それに気づいた呂白は、
「
とアドバイスした。
それから
黄月英も張春華も凰麟院の出身であり、しかも呂白の後輩なのである。
「鼎の足は三本あるから安定するのをお忘れですか?」
と黄月英が言えば、諸葛亮はもっともだと納得したし、
「私のメンツを潰さないでください」
と張春華が言えば、司馬懿はバツの悪い顔をするのが精一杯だった。
陸遜、諸葛亮、司馬懿の三人はそれぞれ等しい才能を持っていたが、相手の足を引っ張るような行為は
《作者コメント:2022/05/24》
読了感謝です!
外伝の最後を何にするか迷いましたが、三国鼎立をモチーフにした内容にしました。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
【外伝】父ちゃん無双 ゆで魂 @yudetama
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