9 クランクアップ
青空の下の砂浜では、
「森浦先輩って、どんなことでもそつなくこなすイメージがありましたけど、苦戦しているみたいですね」
「当然よ。役を演じることは、技術と努力と
ようやくスプーンを握った静乃先輩は、ほんの少しだけ嬉しそうだ。その表情の理由は、苦労や努力に
やっとありつけた白昼夢カレーは、ジャガイモとニンジンと牛肉がゴロゴロと
「私の罪を、部活のみんなに
「しません。静乃先輩は、魔が差しただけですよ。僕がここに来た動機のように」
「それは、犯罪を容認する理由にはならないわよね」
「何のことですか? 静乃先輩は、文芸部や映画研究部のみんなと過ごすよりも、僕と喫茶店で
我ながら
「
「その評価、どうすれば変えてもらえるんですか」
ラストシーンの撮影が、今度こそ始まったようだ。
「長かったわね」
静乃先輩が、この喫茶店に来てから二度目の
――文芸部と映画研究部の集団に、誰かがゆっくりと近づいていた。こざっぱりとした白シャツに膝下
「誰ですか、あのイケメン。映画研究部の人じゃないですよね?」
「
「えっ」
静乃先輩の
――湯浅先輩の手には、バズーカ型の巨大な水鉄砲が抱えられていた。オレンジとグリーンの塗装が太陽光を反射して、ガトリング砲を
クランクアップ後にみんなで遊ぶための
その
真のラストシーンを引っ提げて舞台に舞い戻ってきた小説家は、青い顔で口をぱくぱくさせている遊び人のチャラ男へ、
引き金のボタンが強く押し込まれて、
胸がすくような
「よかったですね。静乃先輩の最後の
「ええ。毒殺よりも、
静乃先輩はそう言って、スマホを操作し始めた。「湯浅先輩を呼ぶんですか?」と訊ねると、静乃先輩は「もちろん」と答えて笑った。
「最高の次回作を見せてくれたお礼を、早く伝えたいからね」
<了>
謎解きはバズーカを撃つ前に 一初ゆずこ @yuzuko
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