第10話 中間テストの説明会

「学校には慣れてきたかね、外部入試の生徒諸君」


外部入試で入学した生徒のみが残った教室で、風夏が尋ねる。

うなずく生徒はいるが、誰も返事はしない。


「まぁ返事がないってことは慣れてきたってことだな」


所々で笑いが漏れる。


「で、なんでそんなことを聞いたかって言うと……そろそろ中間試験がありまーす」


所々で『うげっ』という声が漏れる。


「ま、最初のテストだし、ここのテストは勉強で入学してきた奴ら以外は普通じゃねぇから安心しな」


そう言いながら、風夏は黒板に文字を書き出した。


「まず、そもそも、うちの高校の学科のシステムが君たちはよくわかってないと思うから説明しておくな」


口の悪さに相反して、風夏の文字は丸くて可愛らしい。

手を止めると、彼女は説明を始めた。





まず、うちでは学科の前に『部門』っていう大きな括りがあるんだよ。

その中に学科があんのね。



まず勉学部門。

ここは三つに分かれてる。


まず……知識科。

単純な知識だな。

この世のことをどれだけ知っているかが問われる。


次は思考力科。

ここだと地頭が問われる。

知識がなくても解ける……まぁ謎解きみたいなやつだな。

考える力を競い合う感じだ。


最後に学力総合科。

これは学校で教えられること全てだ。

一番シンプルだな。



次は身体能力部門。

ここの入試はめんどくさいんだよなぁ……


得意なスポーツって各々違うだろ?

だから競技や種目によってアオコウ式のレートみたいなのを作るんだよ。

で、体力が何点、スピードが何点、正確性が何点、みたいな感じで。

その合計点によって順位が決まるんだ。

んで、できる種目が多いとその分加点がある。


じゃ、学科について説明するぞ〜。


まずスポーツ総合科。

レート足して1番のやつが最強って感じだ。


あと、格闘技科。

これも競技ごとのレートで決まる。

このクラスはフェンシング、レスリング、弓道、相撲の4科目だ。



次は音楽部門。

これは……学科2つ。

歌唱科と器楽科がある。


歌唱科はどこへ行っても認められるような、万能な歌唱力を育てる……らしい。

あたしは音痴だからわかんねぇけど。


器楽科は身体能力部門と同じでレート式だ。

オーケストラ、バンド、生徒がやりたいジャンルの音楽なら、なんでもいいみたいだな。

できる楽器が多いと加点されっぞ。



で、芸能部門。


まぁ、その名の通り芸能だ。


モデルとかを目指す容姿科。

俳優を目指す演技科。

ダンサーを目指すダンス科がある。


ん。全部名前の通りだな。



じゃ、最後はその他の部門。


なんかな、どういう分類にすればいいのかわかんなくてその他ってことになってる。


最初、感情教育の部門。

この部門の生徒は全員推薦入試だ。

ものすんげぇ優しい奴らがここになる。


次、Eスポーツ科。

これもレート式だ。

得意なゲーム持ち寄って競い合ってもらう。


次、農業科。

まぁ、その名の通りだな。

野菜、果実、米、小麦、牛、豚……色々育て方を勉強する。


次、調理科。

これもその名の通りだ。

有名シェフ目指してものすんげぇ美味しい飯作れるようにするらしい。

前に残り物食ったことがあるんだが、ありゃあ相当美味かったぞ。


んで、最後。

これ面白いよな。

この学校にしかない学科だ。

しかも創立されたの今年からなんだよ


Vtuber科。

教師陣は長いからV科って呼んでる。


元々ストリーマー科っていう名前で、SNSで活躍する人材を育てる学科がここにはあるんだよ。

んで、この学年にとんでもなく再生回数伸ばしてるVのやつがいてな。

そいつの活躍を受けて、新しくもう一個学科作ることになった。


V科だとキャラクターの効果的な動かし方、動画の編集スキル、トークスキル……色々勉強するらしいぞ。


ちなみにあたしはS組のV科の生徒に関しては2年前からファンだったんだよな。

担任になるって知って、初めて中等部にいるって知ったんだよな。

マジでビビった。






「んまぁ、こんな感じだ」


彼女は喋っている間、線を引いたり囲んだりするだけで、黒板に文字を書いていなかった。

おそらく座学が苦手なのだろう。


「一応、初日にどの部門の生徒にもクソ簡単な5教科のテストを受けてもらう。あ、学力総合科の奴らだけは並行してクソ難しいテストやるからな」


所々でため息が漏れる。


「で、次の日からは各部門によってテストの形式が異なる。まぁ、授業中に各教科の教師陣から説明あると思うから、なにやるのかは割愛」


風夏は黒板を消しながら言った。


「ま、この世代は全員びっくりするぐらい優秀だから安心して受けるんだな」






風夏の説明を聞き終え、薫と律玖は教室を後にした。


「これ、私たちみたいな人間はどうやってテスト受けるのかしら」

「普通みんなは一科目だけだから、きっとどこかしら時間被るよね」

「それに、哀原さんなんかは受験科目多すぎるじゃない? 絶対受けられない科目出てくると思うのよね」

「うん……どうしようかな」


二人が歩きながらそんな会話をしていると、


「おーいそこの優秀な我が生徒〜」


風夏が駆け寄ってきた。

とてつもない俊足だが、全く息が上がっていない。


「っど、どうされました?」


律玖は少しびっくりしてしまう。


「お前ら受けるジャンル多すぎるからな。伝えることあったの忘れてたわ」


風夏が手帳を取り出し、パラパラとめくる。


「んーと……あ、これだこれ」

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喜/怒/哀/楽/ Lemon @remno414

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