第4話 とりあえず話はまとなりつつある?

流されるままこの城の客室とやらに案内される。……なんというかピカピカしていて、どう考えてもおれには不似合いである。質感のいい長椅子に座らされると、横からメイドらしき者が、紅茶を出す。ちらっとテーブルの向かいを見ると、イースは慣れた様子で椅子に座り紅茶を飲んでいた。うんまあそりゃ女神様だもんなあ。

(何となく重い空気に喋れない…)

イースは、そんな俺を見てか、紅茶を置く。

「では、先程は簡単に説明しましたが、どうして貴方を呼ぶことになったか、この国の状況を詳しく話します。よろしいでしょうか?」

「あ、は、はい。」

思わず返事をする。しまった。これ聞いたら、ますます帰れねえ。

「ありがとう。ではまずこの国、この世界について、説明を。まずはこの世界には2柱の神が存在すると言いましたね。1柱は闇の力を使って獣や人を凶暴化させ、破壊を目的とするカクラス・ツォルキン。もう1柱は私ことイーリアス・コーデヴァン。光の力を使い人々に祝福を与えます。」

『祝福?』

「力を授けるということです。その祝福を受けた者は晴れて国の守護軍に入り、カクラスの攻撃から人々を守る役目を持ちます。」

(なるほど…ラノベやゲームに疎い俺でも分かるぞ。祝福っていうのは要は強化するっていうことだな?女神からの祝福とあらば聞こえはいいが俺には罰ゲーム以上だな。)

昔、ゲームにハマって真っ最中だった徹に語られまくった微かな記憶を掘り起こしてようやく理解はしたが納得が出来ない。

『んで、俺を呼んだ理由は?』

イースは少し俯いて、スカートをギュッと握ってからこう答えた。

「数年前までは、この世界はもっと栄えていたのです。勇者もいましたし。しかしここ最近では何故か魔物の数が増え、勢いを増すばかり。しまいには解析不可能な魔物が突如として現れ、防戦一方。」

『待て待て、勇者いたのか!?』

さらっと驚きの真実に、思い切りツッコむ。心なしか視線が痛い…

しかし、女神は気付いていないのか、続けて答える。

「いました…昔は。しかしある戦いの中、彼は倒れて…」

『な、なるほど。』

ファンタジーのような鬱展開に一瞬怯むが、それでも反論する。

『だ、だったら他の…例えば軍隊から一番強いやつを選んでそいつに祝福を与えて勇者にすれば良くないか?そんなわざわざ別の世界から人間呼ばなくてもよお。』

「なりません。」

『え』

「と言うより、出来ません。カクラスを倒すには勇者の証を持った者が勇者しか扱えない剣をもって断ち切る他、方法はないのです。」

勇者の証……?イースの顔を見る限り、具体的なものじゃ無さそうだ。

「勇者の証を持ってるものを確認する方法は色々ありますが、1番の方法はシャーロム山の頂上に刺さった勇者の剣を抜くことです。その剣を抜くことが出来れば無事勇者と認められたとしてカクラスと戦う事が出来るのです。そしてその方法を試すため、各地の軍から一流の兵を呼び集めましたが……結果は何も得ず。」

なる…ほど。それでこの世界には勇者が居ないためわざわざ別の世界から勇者を呼ぼうと考えた訳だな?

ファンタジー世界の知識には疎いため、さっきの言葉を咀嚼しながら、話をまとめる。


「では、話が一段落ついたようなので行きましょうか。」

イースは先程の表情とはうってかわり綺麗な微笑を浮かべ、立ち上がる。


……行きましょう?


ーパンッパンッ

「馬車を用意してください。行先はシャーロム山。」


え、え、え、いや、無理っっっっだって!!!


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英雄の剣は誰の手に 颶風 爽籟 @takenagimaki

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