創作者のリアルに踏み込んだ童話

兎さんと熊さんが登場する、一見可愛らしい童話に思えて、キャッチコピーにもあるように『創作人の悲壮』に切り込んだ作品でした。
中々思うような結果が出ず、自暴自棄になり、自分の努力不足や才能の無さは棚上げして「アイツらは分かってない」と周囲に怒りを向け、それでも「私は味方だよ」と理解してくれる少数の相手も、実はちゃんと自分の作品に触れたわけじゃない……。
個人的にも思い当たる節が多々ありました。それを童話で表現しきったのが凄いです。

ただ、そのために『ワンカップ』や『煙草』というアイテムを出す必要はなかったと思います。
現実世界の要素が滲み出る『毒気』を表現したり、あるいは童話の中に異物を出すことでパロディ感やギャグ色を強める意図があったのかもしれませんが、熊くんが吐き出す言葉だけでも充分に悲壮さは演出されていますので、下地となる舞台はちゃんと『童話の世界』を徹底した方が良いかと思いました。そうでないと「あぁ、これ童話をおちょくる感じなのね」と、伝えたいことが届く前に読者の脳内にフィルターがかかります。

それと、熊くんが毒を吐いて不貞寝して終わるだけなので、よくある創作者の愚痴語りのような印象で終わったのも、勿体ないかなと感じました。そこからもうひと捻り、ふた捻りくらいの展開があった方が、『風刺童話』としての完成度が高められたと思います。

「……そこまで真面目に読み込むものじゃないよ」という作品でしたら申し訳ないです。