ファイアーボール
「ここは外れスキル持ちが来るところじゃねーぞ」
冒険者のギルドに登録に行くと、そんなことをいわれた。
僕のスキルは「ファイアーボール」
たしかに、初球の魔法でしかなく、魔法を学べば誰でも使えるスキルだ。
外れスキルと言われても仕方がない。
しかし、このスキル以外にとりえもないからこのスキルを徹底して鍛えてみたんだ。
「たしかに僕は外れスキルですが……それでも、がんばったんです!
そんなこといわないでください!」
「うるせぇ、足手まといになる前に止めてやろう、というオレの気遣いがわからないのか!
これだから、外れスキルは……」
なんと、そんな気遣いをしてくれていたとは。
きっと高名な冒険者に違いない。
「ありがとうございます!
でも、僕は冒険者になりたいので、がんばります!!」
「ああああ!! くそが、叩き出してやる!!」
といきなり殴りかかって来た。
たぶん、これは冒険者になるための試練に違いない。
僕は周囲に『ファイアーボール』を数十個、出現させる。
相手は「へっ?」とか声を漏らしていたが、きっと驚いてくれてるだけに違いない。
なんて謙虚な人なんだ。
だから、本気で行かないといけない。
ギルドに火をつけないように気を付けながら、数十個の『ファイアーボール』を叩き込み、冒険者の人を吹き飛ばした。
爆発が起こり、冒険者の人はぴくぴくとしていたが、きっとここからすごい反撃をしてくるに違いない。
なので、さらに『ファイアーボール』を叩き込もうとして
「待って! 待ってください、その人はもう倒れてるから!!」
「え、でも、腕の立つ冒険者なんじゃ……」
「その人はDランクで、いばっているだけですから」
と受付の人が止めてくれた。
なるほど、Dランク……駆け出し前の僕より一つだけ上のランク。
「それにしてもすごいですね。ファイアーボールとは思えな威力!
あんなにたくさん出せるなんて」
「ははは、そんな……。
けど、もっと出せますよ?」
「え?」
ひょいっと指を振ると数千個の『ファイアーボール』を揺らめかせる。
本当はもっと出せるけど、これ以上、出すと、ギルドが燃えてしまいそうだった。
「ええええええ
こんなにたくさんのファイアーボール、国一番の魔導士でも無理ですよ」
「あははは、そんな。おだてるのがうまいですね、お姉さん」
ぱくぱくと口を開くお姉さんに、ギルドへの入会書類を出して、僕はギルドを後にするのだった。
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