剣作成スキル

「お前のスキルは『剣作成』じゃ」

 15歳でスキルを貰うための大切な儀式。

 たいていの人はもらったスキルを生かした職につくから、

スキルは人生を左右するほどのものである。

「それはなにができるのですか?」

「剣をつくれる」

「剣を」

「そうじゃ」

「それ以外は……?」

「ただの剣を作れるだけじゃ」

「なにか属性とか魔法を付与したりは……?」

「無理じゃ」

 しかし、僕がもらったのは外れスキルであった。

 田舎からやってきた友人は『剣聖』スキルを貰って、冒険者としての一歩を手に入れたのに、僕はただの剣を作るだけのスキルだった。

 その友人は王都のほうの冒険者パーティーがあって、そちらのほうへいってしまった。


 けれど、すでに家もない僕はこの街でできるのは冒険者ぐらいしかないので、冒険者をすることになった。

 鍛冶師などにも声をかけたが、属性も付与できないスキル持ちはいらない、らしい。


 そんなことで、いまはAランクパーティの荷物持ちとして、なんとか冒険者をやらしてもらっている。

「おい、無能! 荷物持ちしか能がないんだから! さっさとこい!」

「いつ首にしてもいいんだぞ!」

「ノロマね! どうして、そうもすっとろいの!」

 といつものように容赦なく罵声が飛んでくるが、歯を食いしばって後をついていく。

 5人分の荷物を抱えているのだから、早く進めるはずもないだろう。 

 それでも、なんとか荷物を運んでギルドに帰った後だった。

「お前は首だ」

「そんな……!」

「荷物運びもできない奴は我がパーティーにはいらない

どこか、別のところを見つけるんだな」

「でも、ここを首になったらどこにいったら――」

「うるさいぞ、斬られたいのか」

 と、リーダーが自慢の魔剣を突き付けて脅してくる。

 何も言えずに、その場を後にした。


 明日からの職もなくなり困った。

 このまま、この街にいても、あの冒険者パーティーを怖れて、他の冒険者パーティーは入れてくれそうにないから、別の街に行くことにした。

 隣町へと歩いていくと、悲鳴が聞こえた。

 あわてて、そちらに走っていくと、剣をふりあげたデュラハンがいた!

 首を片手にもった騎士の鎧を着た魔物だ。

 デュラハンなんて上級アンデッドじゃないか! どうしてこんなところにいるんだ!


 しかし、一人の少女が襲われてるから、迷ってる暇はなかった。

 『剣作成』スキルを使って、剣を作ると、その間に割って入ったのだ。

  キン、と子気味のよい音をたてて、剣が弾かれて、あっという間に追い詰められた。

 本来デュラハンなんて、Aランクのパーティーで相手にする魔物だから当然だ。

 もう、ダメだ! せめて、足止めを!

 と『剣作成』スキルで剣をつくろうとして、


 ――スキルの覚醒条件を満たしました。


 という声が頭に響き、何かが変わった気がする。


 思い出したのはあのリーダーが自慢していた魔剣だ。

 いつのまにかあの『魔剣』が手元にあり、それでデュラハンを切り捨てた


「え?」


 と、むしろ、うしろからみてた少女から声が上がった。

 僕も信じられないように後ろを見ると、デュラハンが倒れており、自分の手には『魔剣』があったのだ。


「す、すごい!!

 デュラハンを一人で倒せるなんて、さぞ名のある戦士なのですね!」

「い、いえ、ぼくはそんな……!」

 まずい、いま、僕の持ってる魔剣のことを知られると、あのパーティーに因縁をつけられてしまうかもしれない。

 見ると、少女には特にけがはないようだ。

 それを確認した僕は一目散に、その場から逃げ出した。



 ――剣作成スキルが強化され、模倣が解放されました。


 と、逃げ際に頭の中で声がした気がした。

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