悪役令嬢2


 私は侯爵令嬢だが、いまつるし上げにあっている。




「お前とはお情けで婚約を結んだのが、もう限界だ!


婚約破棄させてもらう!」




 婚約相手の殿下が取り巻きを連れてやってきた。 




「お前が彼女にやって来た悪行もさらしてやるから、覚悟をしておけよ!」




 隣にいる令嬢との真実の愛に目覚めたらしく、彼女をいじめたとして、わたしを告発すると息巻いている。




 彼女に対して、いじめをした、といっても、彼女自身が王宮でたしなめられる振る舞いをしていたので、恥をかかないように注意をしてあげただけなのだけど……。


 後ろの取り巻きもそこらへんがわかっているようで、目をそらして気まずそうにしている。




「それで、どうするつもりなのですか?」


「きまっている! いますぐに荷物をまとめてここから出ていくんだ!


お前はもう部外者なんだからな!」


「まだ、仕事が残っているんですが……」


「お前がやった仕事なんて信用できるか!


どうせやってるふりだろうが!!」




 と、殿下は聞く耳を持たない。




 困っていたところに、王様が走ってやってきた。




「なにをやっているんだ!! 馬鹿もん!!!!」


「父上! 聴いてください!!


私は真実の愛に目覚めました!! 彼女を正式な婚約者にしたいのです!!」


「私がほうぼうに頭を下げて決めた婚約になんてことをしてくれたんだ!!!」


「しかし、みながお情けで結んだ婚姻だと……」


「お前がお情けじゃ」


「はっ……?」


「学校での成績はすべてトップクラス、全ての魔法も見事に扱え、礼儀作法もばっちりな彼女に比べて、お前は何なんだ? どういう特技があるんじゃ?」


「け、剣なら……!」


「それも兄に負けてるだろうが!!


 お前にはもったいないぐらいじゃ! それでも、相手の伯爵家に頭を下げて便宜を図ってもらったんじゃ!」


「し、しかし……」


「そもそも、真実の愛じゃと?


 私は知っているぞ、そっちの女は最近、家の借金がかさんで崩壊寸前なんじゃろ?」


 殿下の隣にいた彼女がきまずそうに目をそらした。


「はぁ……もういい、お前は追放じゃ。


 真実の愛とやらを貫くのは構わんが、うちとは一切関係ない、いいな?」


「ま、まってください! それじゃ意味が!!」




 殿下の隣にいた彼女が慌てて声をかけようとするが王は聞く耳をもたなかった。




「うちの馬鹿が失礼をしたのう。婚約の件についてはこちらで話し合っておくから今後も付き合いをつづけてくれんかの?」


「いえいえ、滅相もない。王が悪くないのは知っていますから」


「なんと謙虚な姿勢じゃ……。うちの馬鹿もこれぐらいの知見があればのう……」


「それでは、今後のことについて話し合いましょう」




 王がうなずき、退室をうながす。


 私は王のあとをついて歩いていき、部屋には茫然とした元婚約者たちが残されるのだった。

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