かつての汚れ仕事の人
くだらない人生だった。
毎日殴りつけてくる親が嫌で、そこから逃げ出したが、何の特技もないため、結局は、後ろ暗い奴らの使いっぱしりをするはめになってしまった。
それが王族のお抱えだったから、少しの間、訓練期間があっただけマシだったというものか。
幾多の任務をこなしたものの、ある時、片腕を斬り飛ばされてお払い箱となってしまった。
本来は口封じに殺されるところを、逃げのびて、森の奥深くに隠れて過ごしている。
素顔を隠すために獣の皮を被っているのだが、近くの村では人食いの怪物と間違えられているらしい。
都合がいいので噂をそのままにすることにした。
ある時、小屋の近くに赤ん坊が捨てられていた。
赤ん坊には黒い刺青のようなものが刻まれており、一発で呪われているとわかった。
きっと呪われた子を人食いの化け物に食わせようというつもりで、ここに捨てたのだろう。
布がやけに質がいいから、もしかすると高貴な生まれかもしれない。
ほうっておいても勝手に死ぬと思ったが、もしかすると、なにか脅迫とかにつかえるかもしれないと思い、拾い上げた。
それからというものは忙しかった。
なにかあると泣き喚くは、そそうをしたあとに下着を取り換えるのに苦労するわ、乳の調達に村に顔をだすはめになるは、散々であった。
なにせ初めての経験であったからすべてが手探りだったのである。
人を育てる、というのはこうも手がかかるものか、と内心で舌を巻いた者であった。
しかし、その分、すくすく育ってくれると、なにか心のうちが救われるような気がした。
俺が死んだ後、一人で生きて行けるように、俺の技能を教えるのだが、意外とこの子は筋がいい。
俺が教えたことをどんどん吸収していく様を見て、内心、喜びを抑えきれなかった。
「―――父上!!」
「……逃げろ。床下に秘密の抜け道がある」
それは唐突だった。
ある夜、いきなり住んでいた小屋に火をつけられ、頭巾で顔を隠した集団に囲まれたのである。
恐らくはかつて仕えていた組織が口封じのために襲撃してきたのだろう。
子供のために牛乳や衣服を買いに行ったところから情報が漏れたに違いない。
涙声で呼びかける子供を必死に床下の抜け道に押し込むと、上から蓋をして誰も通れないようにした。
片手で剣を掴む。
久しぶりの戦闘だ。
生きては帰れないだろう。
しかし、悔いはない。あの子を残せたからだ。
そう思い、剣を片手にかつての仲間へと突撃していった。
ざまぁ練習用 結晶蜘蛛 @crystal000
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