月明かりの下 うたう歌
この小さな孤島に伝わる
人魚の伝説。
このコバルトブルーの美しい海には、
深海に棲む、マーメイドは歌う。
時折、聴こえてくる歌声は、とても美しく
人々の心も癒してくれた。
ある月の綺麗な夜。
嵐が起こり、船は難破し、
たくさんの人が海に放り出された。
人々は、海の底へと沈んでいくことを不安に思い、
苦しみの表情で沈んでいった。
悲痛を叫ぶ魂たちが、海の中を
深海から
海の中で、可哀そうな魂に出会う。
美しい歌声で、不安を取り除き、優しく包み込む。
癒された魂は、ゆっくりと昇っていく。
還るべき場所へ。
慈愛に満ちた物語が、生まれた。
———この伝説が、のちにこの島の
空を見上げると、上弦の月が浮かんでいる。
リナとリアは、仲良く手を繋ぎ、いつもの場所へと向かう。
物心がついた頃から、月が見える夜には、続けていることがある。
城の裏には、小高い丘がある。
一面に咲いた、色とりどりのリナリアの花。
白、赤、ピンク、紫、黄、オレンジ。
鮮やかなパステルカラーが、緑の中に溶け込んでいる。
一つひとつは控えめで可愛らしく。
遠くから全体を見ると、幻想的な風景が広がっている。
リナとリアは、この場所がとても好きだ。
散歩したり、追いかけっこをしたり。
絵を描いたり。詩を書いたり。
花を摘み取って、みんなにプレゼントをしたり。
リナリアの花は、二人を見守っているかのようだった。
その丘の中心には、真っ白なガゼボがあり、
そこには、白いグランドピアノが置かれている。
リナとリアは、このピアノの澄んだ音色がとても好きだ。
昼も夜も、並んでピアノを弾きながら、いつも一緒に歌っている。
ある時は、哀しみの歌を。
ある時は、歓びの歌を。
月が見える夜は、ピアノを弾きながら、必ず三曲歌う。
一曲目は、両親に教えてもらった歌の中から一つ。
二曲目は、自分たちで作った歌の中から一つ。
三曲目は、ずっと変わらない、この島に伝わる
月夜に響く、美しいピアノの調べ。
癒されるような、優しい歌声は、どこまでも遠く響く。
海の向こう。
大好きなパパとママに届きますように。
そして、
いつか出逢う、遠く離れた場所にいる人たちへ。
———どうか、幸せであるように…。と、祈りを込めて。
ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ♡‧₊˚*:..。o○☆ あ と が き ☆*:..。o○☆‧₊˚*♡ *:..。o○☆
いかがでしたでしょうか?
東の島のお話し
【 シオン ― 星明かりの下 うたう歌 ― 】も
https://kakuyomu.jp/works/16816927863014089628/episodes/16816927863014153912
ご一緒にお目通しいただければ幸いです。
また違う島での物語。
両方の世界から、そこにある “ 何か ” を感じていただけたら。
*:..。o○☆ *:..。o○☆ *:..。o○☆ *:..。o○☆ *:..。o○☆ *:..。o○☆ *:..。o○☆
リナリア ― 月明かりの下 うたう歌 ― 枡本 実樹 @masumoto_miki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます