宝者来価の恋愛話・短編集

宝者来価

君の好きな星

それは夏の夜に静かなキャンプ場へ訪れた時の事だった。

今では妻と成った彼女は、暖かい珈琲を片手に嬉しそうに天体観測をしている

標高の事もあって温度は少し肌寒い



「こんなに綺麗な星空を見れたから、来られて良かった」

「君はどの星が一番好きなんだ?」

「空に浮かぶ物だと、ジュピターかな」


私は天文学に疎く星がどこに在るかさえも分からない

それにしたって彼女の言葉は妙に聞こえた。

星というは夜空に浮かぶ物なのに、空と限定して言う必要があるだろうか?


「世界で一番好きな星は何?」

「勿論それは地球、生き物がいる星が一番いいから」

「火星にも宇宙人がいるかもよ」


それから私たちは平凡で幸せな日々を30年過ごした。

地球の技術が進化して空を飛ぶ事すら日常的になっていたある日

火星に移民する計画を政府が発表した



「もし私に政府から通達が来たら」

「一緒に行くよ」

「この星が好きだと、君は言っていたのに?」


通達が来て、私は火星に行く事が決まった

宇宙船に乗り込んで訳を聞いた

驚くほど理由は単純な物だったのだ



「地球よりも、あなたが好きよ」





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