無人島 4話


霊安室に配達員の男と遺体を運んであげた


「かなり暗いですけど、コテージにはまだ灯りがつくようですね」


外へ出てみると誰かが付けたままにしており明るい箇所が見えた


「今日の所はコテージに戻って寝ましょうか」

「シェフの方、まだ使っていない所がありますがどうしますか?」

「私は館で寝ますよ」


身体に付着した血を流したくてコテージに足早へと戻った

理由は単純で臭かっただけで運んだ程度でと思うかもしれない

隣に座っていた彼が打たれたせいで噴き出した血を大量に浴びているのだ



蝋燭の灯りだけで自分の使っていたコテージに戻ってシャワーを浴びた

明日も使うかもしれないので蝋燭の火は消しておこうと息を吹きかける前に

本がまだコテージにあると農家の彼が言っていたのを思い出し取りに行った


灯りも無い箇所で誰かの足音がしたが誰でも構わない為に無視をした

本を持ち去ってコテージで読むが確かに中々楽しいものがあった

こんな時のホラー小説チョイスは自分でも笑えて来る


3日目の朝を無事に生きて迎えたのだが


「寝坊した」


時計を見れば既にAM10時であり皆に自分は死んだと思われている頃だった

館に行くと案の定でドッキリをかました芸能人みたいに驚かれた

寝坊してはいけないとは確か書いてなかったのでセーフとする


同じように私も驚いたのだが昨夜から人数が減っていない



「生きてたんですね」

「まさか昨夜の自殺した彼が犯人だったオチですかね」

「だとしたら結構つまらない展開なので止めてほしいですが」

「でも、結構ありそうだと思いまして」

「何故?」

「時計がハイブランドの本物でしたからね、水に沈めても壊れない為すぐ本物だと分かりましたよ」


自分に用意された朝食にも毒は入っていない


「犯人はバラエティ豊かな殺し方を好むみたいですね」

「私なら全員毒殺しますね」

「理由は?」

「食事の全てに遅効性の毒を入れるだけでいいので」


いつも思うのだ、ミステリーで『犯人のやる気』が凄いと

呼び寄せる手紙に食料の用意と今までの殺人

毒を仕込むくらいなら簡単に思えるかもしれないが無人島までわざわざ訪ねて仕込んだのであれば努力と金は膨大に違いなかった

計画を練るのも漫画を描くほうがまだ楽かもしれない



「ちょっといいです?」


シェフが呼び何かと思えば外に非常用バッテリーがあったのだ

雷のマークに所謂『コンセント』らしき穴も見えるので使い道は分かる

非常事態なので何が起きるのか察しが付くというか


「これ人に頼むの申し訳ないんですが、誰か代わりにコンセントとして使えるか試すか明日まで待って貰えますか?」


手を挙げたのはアパレル店員の女性だった


「なら私が変わります」

「良いんですか?」

「食事のお礼に、という事で」


少し皆が距離をとって見守り彼女が電源を入れた

次にコンセントを握った所で一気に彼女の身体は焦げ付いた

どうやら感電死したらしい

まだ持っていた線香の一本を燃え移った草に近づけた


火が付いたので土に突き刺す


「素敵な最期だと思いますよ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る