無人島 3話

昼に成る前に海を見に海岸へ来た

荒れる海と無くなっているボートに気が付き一度皆に報告しに戻る事に

道中で農家の彼と合流した


「ええとバスケの選手だった方ですね、今まで何処に居ました?」

「海を見に海岸へ行ったら荒波でボートが流されていました」

「『演出』のような物でしょう」


館に行って皆に事実を伝えるが美容師がまだ来ていなかった

既に時刻は13時であり何も無ければ空腹で館に顔を出す筈だ

犯行が行われたと考えるのが自然ではあったのだが


「二人ともお腹がすいているでしょう?召し上がれ」

「先に食事を頂きましたから僕が確認してきますね」

「外は風が強いので怪我にはお気をつけて」


配達員の彼は切られた短い髪の毛を撫でながら館を出て行った


「あれ」

「どうかなさいました?」

「その服って綴り間違ってますね」

「え」

「すみません、英語の教師をしていたもので気に成って」


【Bicyclette】というスペルと自転車の絵


「これフランス語なんです」

「通りで」

「でも英語って私は話せないので尊敬します」

「スポーツ選手なのに?」

「通訳アプリがありますから」


ランチはサンドイッチで卵サンドが美味しかった

隠し味はからしではなくワサビで少し辛いがより引き立てていたのだ

全てを平らげた頃には配達員が戻って来て伝えた


「美容師さんはコテージで亡くなっていました」

「次からは一食分少なく作ったほうがいいかもしれませんね」

「供える分を作っているだけですから」


現時点でまだ生き残っているのは6人


1人目 私・バスケ選手

2人目 シェフ

3人目 配達員

4人目 英語教師(女性)

5人目 農家

6人目 ?(女性)


「そういえば職業きいてませんでしたね」

「アパレル店員です」

「服屋とはまた可愛らしい」

「想像とは違うかと思います、地方のスーツショップで働いていただけですから」

「ちゃんとした服装を常に着なければならないのは大変そうです」

「服についてはスーツでいいので苦では無かったですよ」

「アパレル店員さんは犯人だれだと思いますか?」

「あなたでは無さそうだなと」

「どうしてです?」

「カメラマンが刺されて亡くなった昨夜にあなたはお医者様の爆破されたコテージに一番に来ていましたから」

「その後で殺しているかもしれませんよ」

「無いでしょうね、シェフの方は早起きですから鉢合わせていない時点で薄い」

「探偵役でも貰ったかのような素晴らしい推理だと思いますよ」

「残念ながら違いますよ、逆に私を疑わないのですか?」

「そういえば爆発でも出てきませんでしたね」

「疲れていたので音でも起きる事は無かったのです」


持ってきた線香だが火を忘れてしまった

仕方なく台所へ行くと再び農家の彼と出会う

皿洗いをいつも手伝っている様子だった


「おや」

「火を貸して貰えませんか?」

「ライターなら持ってませんが」

「いえガスの火です」

「ここは禁煙だと思いますよ」

「煙草ではありません」


線香に火をつけ2階に上がって彼の遺体のそばに線香を置いた

酷く鉄臭い部屋の香りに煙までまざって異質な雰囲気である

最も死体がある時点でおかしいとは思う


1階に戻ってくると皆でトランプをする準備をしていた


「お帰り」

「……トランプですか」

「将棋や囲碁もありましたが」

「ルールが分かりません」

「ババ抜きぐらいなら知っていますよね?」

「流石に分かります」


6人全員が参加してトランプを楽しむ

誰が最下位になるかとひりつく勝負の結果

負けたのは農家の彼だった


「負けてしまいましたか」

「コテージで戸締りをしたほうがいいかもしれませんね」

「人数がいる中で人を殺すほうがずっと難しいでしょう?ここでのんびり本でも読みますよ」

「何か持ってきているのですか?」

「面白そうな物を数冊、私のコテージにまだもう少しありますよ」


彼は夜までずっと本を読んでいた

最下位だったからといって死ぬ訳でも無さそうだが

心の内は分からないままに夜まで時間は経過した



「6人から減りませんでしたね」

「食事を全員分用意していて良かったです」

「頂きます」


手を合わせて食事を始めた

毒で誰かが死ぬような事態も無く本を読んでいた彼も生きている

トランプも誰かを選ぶ為の物では無かったのだろうか


「ご馳走様でした」


席をたった瞬間だった

館の電気が停電して消えた

乾いた手で叩くようなパンという音


懐中電灯があればよかったのだが喫煙者すらいなくてライターも無い

声を掛け合う中でブレーカーを挙げたがそれでも電気が付かない

手探りでキッチンへ行き火を付けた


シェフが蝋燭があると言って引き出しを開けて火を灯して戻る


落ちていた銃と胸を撃たれて死んでいる農家の男性


「これ銃ですね」

「出入口の様子も見ましょう」


外へ出る扉は閉まっていた上に内側から鍵がかかっていた。








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