制作者と既プレイ者が、未知のバグへと立ち向かう冒険活劇

天才少女の『海玲』が開発した自作ゲーム『ウィスタリア』。その作品は数年をかけてフルダイブ式のRPGへと進化したが、ミレイはゲーム世界の中に囚われてしまう。
幼馴染を助けるため、危険を顧みず自らも突入した主人公の『蓮』。ゲーム製作者であるミレイと、原型であるウィスタリアを過去にプレイしたことがあるレンとで、バグが発生したゲーム世界をデバッグしていく――。

他の方もレビューしている通り、この手のジャンルの作品は色々とあります。
しかし、舞台となる作品を作ったゲームマスターのミレイが内部に閉じ込められ、過去にプレイ経験のあるレンが知識を活かしたり、あるいは知っている情報と食い違うバグに困惑したりというのは、個性があると思いました。
メインヒロインのミレイは硬い口調でありながら、幼馴染であるが故の親しさや、レンが助けに来るまでにやはり不安だった、という部分などで可愛らしさや魅力を感じます。

ただ、本編が始まるまでが遅いのが気になりました。レンとミレイとの出会いや、ウィスタリアの開発経緯など、どれも必要な情報ではあるのですが、プロローグが長いと本題に入る前に読者が離れていくリスクもあります。
似たような内容の作品が他にもあって、しかもそれらが名作や大ヒット作ばかりとなると、その辺との差別化や本作ならではの『強み』は特に重要になってきます。ゆっくりしている暇はないはずです。
更に、ようやく本編に入っても肝心の『デバッグ』シーンがアッサリ済んだのも惜しいかなと。デバッグはこの作品の肝であるはずなのに、大きな盛り上がりやピンチもなくサクッと終わらせたのは、強みを大きく削ぐことにもなってしまいます。

とはいえまだまだ序盤ですので、今後の展開で山場だったり黒幕だったり真相が訪れて盛り上がるのかなと思います。色々な意味でこれからの『修正作業(デバッグ)』に期待です。

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