超純水・真子ちゃん

嶋 徹

第1話 真子ちゃんは今日もブイブイ働く

 15:00の休憩のサイレンが鳴る~。

(心の中の狼がオウオウ叫ぶよう……)



「はい、はい、休憩、休憩、足がガクガクしてる!」


 休憩するようにいい回っているおばさんがいる。


 工場は都市圏から外れた工業団地内にあった。名はブロッキ-・テクノ㈱といった。工業用フィルターを製造しており、国内に2つ、海外2つ工場を持つ中堅企業であった。


 真子ちゃんこと、沼田 真子は大学を卒業して新卒で入社した。父親が創業者、社長であること、それとある秘密を隠しての社会への門出であった。



───────────────────♡



 それから43年後、真子ちゃんは65歳になって再雇用となった。その間、役職に就くこともなく、最強の平社員と呼ばれながら毎日働いていた。普通に旦那がいて、子供がいて、孫がいる二重花丸の人生……かと思われたのだが……


 15:00からの15分の休憩時間。更衣室にて。三者トップ会談。だれも更衣室には入れない。


「真子ちゃん、どう思う?あいつの態度?」


「そうね~、でもね、夏葉ちゃん。ほらまだチームリーダーになったばかりだから!」


「でも、なったばかりとかうちらには関係ないやん!」


「春風ちゃん、それを言ったらおしまいよ!アハハ」


「本当だ、アハハ」


「それでもうちはね、あまりというか殆ど影響受けてないからありがたいね」真子


「本当よ。働けるだけ感謝しないといけないね」夏葉


「ほら、マスクを製造したじゃない。あれ、売れたの?」春風


「売れてるわけないやんね。売れてるなら、こんなに売れましたっていいなさるよ!」真子


「うちの会社、なんかつめが甘いよね?」夏葉


「本当ね。アイリスなんちゃらみたいに格好良く他業態に進出できないものかね?」春風


「何が違うのかな?」真子


「どうしてうちにはできないの?」夏葉


「社長の違いでしょ。ゴルフばっかりして真っ黒に焼けて………」春風


ここで15:15のサイレンが鳴った。


三者三様、各々の持ち場に帰っていった。 



「社長の違い……か」

 真子ちゃんは社長を気の毒に思った。社長は結婚もせず、父が作った会社の2代目社長になってくれ、日々奔走している。私が普通の人生を送れたのは社長、沼田 誠のお蔭だと信じている。


「お疲れ様です」


「あ、あ、はいお疲れさま」


あの子は今度、洗浄に入った派遣の子ね。

寡黙というか……。50歳で派遣だからね。洗浄は体力的に厳しいからいつまでもつことだろ。頑張ってほしいけどね。最近の正社員も含め離職率が上昇しているように感じる。誰か数値だしてるのかな?今度、確認しなくちゃね!


 なぜか、あの子、気になる。



 








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