第4話 ブロッキ-テクノの洗浄室が山口の職場だ
真子ちゃんはあわてんぼうだった。入社して43年経つがたびたび失敗した。
製造するフィルターはドリンク、洗剤、OA機器などの用途に使用された。それで食品会社なみに衛生管理が重要視された。毛髪1本の混入でも起きようものなら会社総出で原因追求した。ハゲがほっとする瞬間だろう。
会社は幾つかのグループに分かれ、そのグループを仕切るグループリーダ-がいた。その下部組織にチ-ムがありチ-ムリ-ダ-が管轄した。セクショナリズムは否定できない。
真子ちゃんは一応何でもできた。それは何でも失敗してきたことを意味する。
だから人員不足の部署にやられた。仕事は懸命にやった。だが何かあれば真子ちゃんに相談したい人が多く、おしゃべりする時間も長く長く仕事の効率はよくなかった。でも真子ちゃんはそれでいいと思っている。
気になっていた洗浄の子は、山口哲也といった。話してみると気さくで感じのよい子であった。いつのまにか仲良しになっていた。ただ、このときはまだ素性は知れなかった。2年後、図ったように頭角を現すことになるとは夢にも思わなかった。
「また、ドアを閉めていない。防毒マスクもズレている!」
洗浄室は有機溶剤IPAを使用してフィルターを循環洗浄していたのでマスクの使用などうるさく言われた。
「ドアはだれか出て行って閉めいないだけ。防毒マスクはうごいていればすれるんですけど!」と山口は言い返した。
坂口チ-ムリーダ-は、
「なんだそのいいぐさは。なにさまのつもりだ」
「それはこっちの台詞だよ。外にでろ(これ言うときはあ~あクビだな。また、捜さないとな~と思った)」
そこでグループリーダ―が止めに入った。その時ピンと来た。坂口チ-ムリーダ―はチ-ムリーダ-に言わされたのだなと……。
私はこのグループリーダ-とぶつかってばかりいたから。
この件は先方のパワハラでお咎めなしですんだ。後日、山口は坂口TLに丁重にわびたらしい。そしたら坂口TLもわびたとのことだ。やはりこいつは白だと山口は確信した。
真子ちゃんが洗浄の子と仲良くなるのは仕事を手伝ってもらわないといけないからでもある。
通常は洗浄して乾燥機で12h乾燥。ただマイクロ波工機というものがあり、1.4hで乾燥できる。しかし少量しか乾燥できない。
それで真子ちゃんが就業内では終わらないので残りを洗浄の人にお願いするという図式なのだ。
これが沼田 真子の仕事的日常。山口はよく聞かされる、真子ちゃんから、
「もう足がガクガクする」と。65歳。大変な仕事だ。
超純水で沼田 誠に変身した場合は疲れる箇所がちがうのよ。足は平気。座っていいんだもん。でもね……どっちも大変。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます