第5話 社長やめたら会長にされそうでいやだな
真子ちゃんのスマホに社長宛で着信があった。
「はい、沼田です」
「社長、お早うございます。太田です」
「お早うよう。どうした?」
「今日は御来社いただけるのかご確認させていただきたくて……」
「いくよ」
「え!ありがとうございます」
「何か急ぎがあった?」
「特別にないというかみんなというか……」
「決裁事項が滞っているのか?」
「はい」
「わかりました。行きます」
真子ちゃんは工場へのルートから外れタワーマンションに向かった。
誠の部屋に入ると服を脱ぎ、超純水を飲んだ。真子ちゃんと誠では身長差が30㎝あった。
ふたりは同じ脳なので記憶は共有していたが別人格であった。
誠は真子ちゃんが忘れっぽいのを知っているので部屋のデスクのメモ帳によく走り書きをしていた。
「超純水の減りが激しい。社長後継者ができるまで誠の時間を増やしてほしい。そっちの仕事もあるのに申し訳ない……」
と書かれていた。まだ65歳だし、なんでそんなに急いでいるのかわからなかった。ただ超純水は大切しないといけないことは同感だ。
私が10歳で超純水で誠に変身した時からお父様は超純水の研究をさらに進めた。しかし同じ効能を持つ超純水は作れなかった。結果、地震で残った5トンの超純水を飲み続け55年が経っていた。それが底を尽きつつあったのだ。
「OK」と書いてス―ツに着替えてミラジ―ノからマセラティに乗り変えて出発した。
「私がいなくても大丈夫にしないとな。後継者より先だよな。釣りに行きたいばかりにな。船も買っちゃたしな……」
オフィスは都心部に営業部門とともにあった。
「お早うございます」社長
「お早うございます」社員
社長、朝の訓示などを一ついただけたらみんなのモチベーションも上がりますが……
「え?そんなのあったったけ?まあいいや来週から一人一週間、工場研修に行こう。私このまま工場がいいというのはダメ。おわり」
「アハハ、アハハ」
「さあ、決裁するぞ。印鑑持ってきて。あ!専務いる?呼んでください」
「はい、社長」
「今から忙しい?」
「いえ、大丈夫です」
「すいませんが印鑑押してください」
「はい……」
「わからない書類は別にしておいてください」
「坂田さん」
「はい、社長」
「専務に離職票とか資格取得届とか年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署関連書類の説明してあげてください」
「はい、わかりました」
「次は何が滞ってるの?」
「海外2工場の社長との打ち合わせです」
「いいよ。でも今10:00だよね。時差2時間でしょ?早いよ。かわいそう。打ち合わせの前に何かしよう」
「では2時間で健康診断を……」
「………」
「もう2年もされていない……」
「やっぱり後継者が必要だな……」
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