第3話 真子が超純水を飲んで誠に変身した

 第1話の沼田 真子と第2話の沼田 誠は同一人物である。


それぞれにマイナンバーを持ち、法律上完全に別人格だ。真子には貧しながらにも家族があり、誠は結婚していないが資産家だ。


説明する必要があるね。

 


真子ちゃんが10歳の時の出来事だ。


 真子ちゃんはご飯の支度ができたので父を探していた。すると父の研究室のドアが少しだけ開いていた。真子ちゃんはドアを開けながら


「お父様、ご飯の支度が……」

 父は居なかった。

 研究室への入室は硬く禁じられていたのでドアを閉めた。が、ドアノブから手が離せない。

「入ってみてみたい」

 禁じられているが故の悪戯にも似た軽い動機だった。



 中は小学校の理科室みたいに感じた。

「あ?!」

 天井をぶち抜いた巨大なタンクがあった。循環している音が聞こえる。タンクを触ってみたらつめたかった。

そのタンクには『超純水』と名前が付けられていた。


「お水?」

「お父様は何を作ってらっしゃるのかしら?」

「これだけ沢山あるのですから一口いただこうかしら……」


「真子!何をしている!!!」

父が後ろから怒鳴った。びっく、真子ちゃんは大変な事をしてしまったと父に謝った。

「ごめんなさい!こそっと入ってしまった」


「真子ちゃん。研究室のなかにははいってはいけないルールだよね!」

「はい」

「なぜ守れなかったの?」

「わかりません。見てみたかったの、中を」


「そうか。確かにみてみたくなるだろうね」


父はこっちにおいでの仕草をした


「やった!」


「これが最初で最期にしてくれるかな。危険なものが沢山あるからね!」

「はい。でもお父様、ご飯の支度ができました」

「そうか。じゃあさ-と説明するよ!」


「お父様。あのタンクはなんなの?」


「今、研究中の『超純水』というものだよ。無味無臭で水と区別はつかない。これからは少数の人間が長く生きる時代がくる。不老不死とはいかないまでも、健康食品を作りたいんだよ。今、会社はフィルター製造で上手くいってるけどいつどうなるかわからない。第2の基幹事業にしたいんだ……。ごめん。真子ちゃんには関係なかったね!」


「お父様。休みの日は休んでね」


「ありがとう、真子ちゃん」


その時だ

「ぐら、ぐら、ぐら」

「地震だ。真子ちゃん!タンクの下に隠れるぞ……」

「はい」

「グラ、グラ、グラ」

揺れは治まらない。

タンクのナットが緩んできたのか漏水が始まった。

「お父様。こわい」

「大丈夫だ。真子ちゃん。このタンクは耐震補強している。崩れることはない」



しかし、真子ちゃんは超純水を浴びてびしゃっびしゃっになっていた。幾らか口にしたのは否定できない。


巨大タンクの超純水が半分以下になったところで地震は治まった。


「真子ちゃん!ケガはないか?」


「お父様。ケガはありません」


「え!?お前はだれだ?」


「何を言っているのですか私は

  


    沼田 誠です」




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