第2話 社長してます。誰か後継いでくれませんか?

 グラスに浮かべた氷がカランコロンと音を奏でる。

 あれや、これ……今日はもう考えないと自分に言い聞かせ、一気にバーボンを飲み干す。するとクラ…として生きてるぜと思うんだ。


 タワーマンションの最上階。車はマセラティ。時計は……CITIZEN「カンパノラ」。時計を語ると長くなるので「コスモサイン」を一度も見てくれよ。荒んだ心が癒やされるぜ。


 沼田 誠と申します。社長職に就いたのは15年前だから50歳の時だね。先代が逝去されて……いやいやだったよ。社長も御子息は娘さんだけだったからね。15年たった今、今度は私が後継者問題で四苦八苦している状態なんだ。


 私は結婚していないから子供もいないし、甥もいない。血縁関係でひっぱれる人物はいない。じゃあ、社内にいるかと聞かれたらいまのところは「 No 」だ。社外になるのかな?とにかに焦ってるんだ。私は文系だけの大学に進学したから理系の学友がいないんだ。理系というだけで頭良く思えてくるんだもんな。判断が鈍るよ。


 会社の業績は伸びている。この15年間、赤字決算したことはない。もちろん、もっと伸ばせたのでは?という意見はあるだろう。そんなやつには、

「じゃあ、おまえがしろ。私は辞める」

と言ってやりたいよ。バカタレ。


 10歳の時、池で釣りをしたんだ。その池は今でもあるんだよ。小さくなったけど水は枯れていない。不思議なんだけどね。

でも、不思議なことはあるもんだよね。

あ、あ、釣りの話はこの後やろう。


 旧家の一部を解体することになり整理していたら父親が使用していた時計が出てきた。セイコーの機械式で今でもうごいているんだ。55年くらい前だよ。すごい技術力だと思うし、何か父親がつけていたのを覚えているんだ、10歳くらいだよ。なにが言いたいかというとそのデザイン性の凄さだよ。それから一日中つけている。


 それで時計をつけ始めてから車の事故2件、起きたらテレビがテレビ台から落ちていた(ありえない。地震かなとスマホ見たけどない、しかも無傷)、左足関節下大きな擦り傷?いつ?


 ねえ?時計…外したほうがいいよね?

 お父さん、怒ってるよね?


 釣りの話に戻るよ。私は糸が絡まってしまい、釣針をたらしたままほどいていたんだ。そしてほどき終わって釣り竿を上げたら何とカニさんが釣れていたんだ。だから私が初めて釣ったものはカニさんなんだ。こんなことある?不思議だよね。


 不思議な話をしたいんじゃないんだよ。早く後継者見つけて、引退して、釣りに行きたいということを声を大にして言いたいのであります!


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る