「……つまるところ、そのほうの旅とは、まさに思い出のなかの旅なのだ!」

え? これはなんだ……!?


初見では、非常に困惑しました。しかし、それこそ作者様の狙いなのかもしれません。本作は今では失われてしまった、幼き日々の感性を再現する試みです。

本作を読んで、やはり幼い頃には独特な感性を持っていたのだとほろ苦さを感じると共に、それが既に失われてしまっていることに対する喪失感を覚えました。口に出して読み、ひとつの響にしたことが余計にそうさせたのかもしれません。

幼き日の思い出など、再現しようと思っても容易にできるものではありません。文字情報のみで再構成をしようとするのなら尚更でしょう。しかし、作者様の試みはまさにそうしたことであり、感服いたしました。


目の前に広がるは、幼き日の世界……

「……つまるところ、そのほうの旅とは、まさに思い出のなかの旅なのだ!」
 ――イタロ・カルヴィーノ(米川良夫訳)『見えない都市』

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