世界を股にかけて殺しを請け負う男がいる。
今回はマレーシアへ飛んだ。深い観察眼から反映される街の景色は煌びやかで、昼夜を問わず現地の魅力を吐露してくれるのが嬉しい。グルメの情報も同様、日本マレーシアの定番から名前すら知らなかったソウルフードまで食べ尽くしてくれる。特にスイーツ系は、殺しの禊でもあるので念入りだ。
さらには、マレーシアの文化や歴史にも言及し、独自の解釈も述べてくれる。愛宕はマレーシアの事情に無知なので、とても興味深く、そして面白く読ませていただいた。
もし復讐を考えているならば、彼に依頼をかけてみるのはどうだろうか。世界各地、仕事とあらばどこへでも向かってくれると思う。次の舞台はどこだろうか?
作者さまの次作にも期待してます☆
特殊な能力を持った殺し屋さんの旅のエッセイ、第三弾です。
作者・久里 琳さんの古風で硬い文体は、そのまま生真面目で己に厳しい殺し屋さんのキャラクターとして、見たこともないような難しい漢字使いも含めて不思議なくらいぐいぐいと読めてしまいます。他では見ないような硬さにも拘わらず、そういう性格のキャラクターの一人称だとこんなにも読みやすいのかと驚くほどです。まるでマジック!
そんな硬く古風な語り口調で、今回はマレーシアの食文化、宗教、歴史、産業や自然について丁寧に触れられています。まるでドキュメンタリー番組を視ているかのように詳らかな文章は、文字を追っていると常夏の国の熱気を帯びた風や、屋台から漂ってくる香辛料の香りを感じるかのようです。
でてくる料理はどれもとっても美味しそうなので、空腹時は注意ですが(笑)、読めばマレーシアに行ったような気になる、否、行きたくなること間違いなしです☆
世界をまたにかけて活躍する殺し屋エッセイシリーズ、第三弾はマレーシア。
宗教も文化も異なる三つの民族が共存する国の深くて複雑な事情と、南国ならではの色鮮やかで大胆な食。赤道直下で生きる人間の逞しさと自然の猛々しさ。
殺し屋さんの視線を通して、今まで知り得なかったマレーシアの貌が見えてきます。
抑制のきいたモノローグはこのシリーズの個性ですが、その硬めの口調によって殺し屋さんの考察が引き立ちます。そして同じ口調で自虐的に甘いものレポートをされるギャップも面白いです。
ぜひ一緒にマレーシアの旅へお出かけください。ただし、飯テロが多発しますのでおなかの空いているときはご注意を。