第177話・カレーヌ先生は超絶凄い英雄だよ


 ガラガラ


 教室の扉が開く。


「本来の担任であるティーチャ先生は諸事情によりお休みすることとなりましたので、今日からこのクラスは【察知の天魔】である私カレーヌが担任になります。

 どうぞ、皆さんこれからよろしくお願いします」


 ナチュラルにカレーヌが教室に入って自己紹介をした。

 色々とツッコミたいが、本来の担任であるティーチャ先生の諸事情って大丈夫? 

 そのお休みって何か非合法なお休みじゃない?ちゃんと望んで休んでるの?脅迫されてない?

 絶対カレーヌが裏で何かしてるやろ。まあ、天魔であるカレーヌなら裏も表も関係ないか。


「といっても、私にとって一番大切なのは旦那様だけですし、旦那様以外はおまけですね。とはいえそれなりの素質があれば教えても良いけど、んっと、パッと見た感じ私が教えても良さそうな素質の持ち主は3人かなって、ん?そこの女、何故お前の手から旦那様の手の香りがする」

 さっきまで握手してたもんだから、マツカゼちゃんがカレーヌに思いっきり目をつけられる。怒りマシマシ。これ、俺いなかったら普通に痛い目に遭わせてる気が・・・。

 イトは割と教えるのが好きだし面倒見の良い性格だけど、カレーヌって別に教えるのが好きでもないし、面倒見も良くなかった気が・・・騎士団での特訓も基本的に実践訓練で殴って体に覚えさせるとかだし。

 ついでに強者以外に対しての興味関心も薄いからな。普通の人なんて路傍の石以下に思ってるだろうな・・・。

 面倒だけどマツカゼちゃんはこれから天魔に覚醒して俺の大事な駒になるし守るか。


「カレーヌ、やめろ」

 我ながら想像よりも低い威圧的な声が出た。

 教室の空気が凍り付く。

 それもそうか、天魔であるカレーヌにたかだが、怠惰な第五王子が強い言葉を使ったのだから。


「で、でも」

 カレーヌは少し不貞腐れたように不満を露にする。


「面倒だろ。二度も俺に言わせるな」


「は、はい旦那様」

 俺が面倒事が嫌いなのを知ってるので、流石にもう口答えはせずに引き下がるカレーヌ。

 それを見てクラスメイト達は天魔であるカレーヌに命令する俺に対して尊敬の念を抱くでもなく、憧れるでもなく、敵意を抱いて来た。


 うん?

 何で?


 クラスメイト達が割と洒落にならないレベルで敵意を抱いてるんだけど。

 え?おかしくね?


【だ、旦那様、もしかしたら私というこの子達の憧れの存在に対して失礼な態度を取ったのが許せないのかと・・・】

 念話で俺にカレーヌが伝えてくれる。


 そういえばカレーヌって一応元々この国の三代将軍の一人であり、数多の魔物を葬り去り、数多の危険から王族や貴族を救いだし、100点の美貌と120点のスタイルを持った民からの信頼厚い英雄だったわ。

 それこそ物語に出てくる英雄に並んでも遜色のないレベルだし、何ならカレーヌについて書かれた物語、絵本とかあったな?

 何なら俺、読んだことあるわ。


 で、学園に通ってて強くなりたいという欲求は普通の人よりは高いと思われるクラスメイト達がカレーヌのことを好きじゃない理由って探す方が難しいよな。


 なるほど納得したわ。

 え?理不尽・・・。


「ああ、あのカレーヌ様が私を認知してくれてあの女って呼んでくれるなんて。ああ、ああああ、ああ。素晴らしいよ。素晴らしいよ。素晴らしいよ。嬉しいヤバい駄目鼻血が・・・」

 マツカゼちゃん別ベクトルで盛り上がってるやん。

 あれ?俺の想像の10倍くらいヤバい人じゃね?いやまあこれくらい狂ってないと天魔に覚醒出来る素質は持てないか。

 ・・・いや、それでもだろ。


【旦那様、私の凄さが分かりましたか?】

 俺がカレーヌの凄さを理解して感心したというのを察知したな。


【そうだな。凄いよ。本当にな】


【ふふふ、でしょでしょ。でも今は旦那様一筋ですから安心してください】


【ああ。安心するよ。それよりも担任なんかになってこれからどうするつもりだ?】

 

【えっと、旦那様と少しでも長く一緒にいようかなって、ただそれだけです】


【な、なるほど。因みに勉強を教える気は?】


【素質あった三人の内一人は脱落なんで、二人だけなら良いですよ】


【脱落って、ああ、マツカゼのことか。まあカレーヌには言っておくが、彼女天魔に覚醒出来る素質を持ってるぞ。それも鍛冶系統に特化した天魔にな】


【え?本当ですか。それなら話は別です。天魔に覚醒したせいで私に合う武器がなくなって探してたんです。丁度良いし私の武器を作らせましょう】


【そうか、カレーヌが乗り気なら結構話は簡単に進みそうだな。よし、俺とマツカゼを呼び出せ、そんで適当な空き教室に転移するぞ】


【かしこまりました。旦那様】


「おい、そこの女、マツカゼと言ったか?私の旦那様についてこい。

 さあ、旦那様一緒に行きましょ」

 天魔の身体能力で俺の側に一瞬で移動したカレーヌが俺の腕を抱きしめる様な形で歩き出す。

 クラスメイト達は嫉妬の目線で気が触れそうな感じになってるが、面倒なので全部無視。

 急に憧れのカレーヌに呼ばれて地上波で移せないような顔してるマツカゼちゃんも「は、はぁいい」なんてかなり情けない声を出しながら後ろについてきてはいる。


 今更だが、マツカゼちゃん天魔にして大丈夫かこれ?

 いや天魔に覚醒させるけど・・・。させるけど・・・。やっぱり大丈夫かな?

 面倒なことにならなければいいけど。

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自他共に認める怠惰な第五王子様は世界最強の実力者ですので今日も面倒と言いつつ無双します ダークネスソルト @yamzio

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