冷凍フェニックス焼鳥工場見学

木古おうみ

冷凍フェニックス焼鳥工場見学

 では、皆さん。昔は焼鳥に何の鳥を使っていたか知っていますか?



 そうですね、鶏です。

 あんなに白くて温かくて柔らかい上に一度殺したら死んでしまう愛らしい生き物を食べていたなんて残酷ですよね。


 では、今は?

 はい、皆さんご存知。不死鳥ことフェニックスですね。



 幻想生物が次々と発見され、インフラに組み込まれてからの技術革新は目覚ましいものでした。

 食肉加工分野において、フェニックスはぬっぺっぼうバイオミートや培養プラント養殖人魚に次ぐ重要なものです。


 この冷凍焼鳥工業では一日二トンものフェニックスの肉が加工され、皆さんの食卓に届けられていきます。



 フェニックスが不死鳥と呼ばれているのは何をしても死なないからではありません。

 寿命を悟ったとき、自ら燃える薪の中に身を投じて灰になった後、再び火の中から復活するためです。


 この工場では二層式の炉を使っており、まず絶えず炎を燃焼させている上段にフェニックスが飛び込んだ瞬間、絶対零度まで温度を下げてある下段まで落下させることで、灰になる前に肉を採取することを可能にしました。


 また、フェニックス自身が認識できない速度でそれを行うことで、自身が灰になったと錯覚したフェニックスの油が上段の炉についた煤と混じることで、フェニックス自ら復活します。


 一種の永久機関として食肉を確保することができるんですね。



 幻想生物愛護の観点から付け加えますと、工場でフェニックスの意思に反して火に投じ、強制的に復活させるということは行なっていません。

 では、どうしているかというと、窮鼠の遺伝子を配合させることで一生のサイクルのスパンを鼠と同レベルまで短くしているんです。

 お陰でもうすぐ寿命だなと思うフェニックスの自由意志を尊重した復活が行われているわけですね。



 それに、通常ならば食肉を採取した後加工の工程が必要になりますが、フェニックスは自らを燃やしているので採取と同時に焼鳥としての加工が住んでおり、人件費の削減にも役立っています。

 まさに次世代の食糧事情問題を解決する期待のシステムですね。



 デメリットとしてよく質問されるのが、フェニックスの肉を食べたら自分の寿命に影響が出るのではないかというものですが、ご安心ください。

 フェニックスの肉を食べて寿命が減ったという事案はありません。むしろ伸びた事例が多く観測されます。



 その場合、延長される寿命はせいぜい十年、二十年。

 平均寿命は男性・八百二十年、女性・八百五十歳ですから、誤差のようなものですね。

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