この町の交通手段は焼き鳥!!

DITinoue(上楽竜文)

うちの町の交通手段は焼き鳥!!

 ここは、日本国。首都は東京だ。だが、第二の都市というものはどこだろう?大阪だろうか?ネットで調べてみると、どうやら横浜らしい。で、私はそれに異議を唱える!!

「第二都市はここなのだ!!土地の名前は言わないが、本当にここなのだ!!色々発展してて、人口も多くて、土地も広い。なのに、世間は全く気付いてくれない。どうしてなのだ!!」


おお、そこの君、まさか私の口癖の独り言聞いてたのか?すまん。ええ、私は誰か?私は、47都道府県外で全く世間に知られていないが、確かに日本の県である「この土地」の知事、後藤貴信ごとうたかのぶだ!大いに称えろ!・・・・・コホン、さっきのは冗談だ。気にしないでくれ。


で、私、後藤は最近新しいプロジェクトに取り掛かることにしたのだ。大きい都市では、公共交通をよく使用するよな?ここみたいな遠いところには船や飛行機を使うよな?それで、私は考えた。交通手段をメチャクチャ改革したら客がメチャクチャ来るんじゃないのか?!

珍しいバスや電車を見に客が訪れ、そして、コチラから珍しい船や飛行機をあっちに派遣したらみんなが驚く。そして、そこから宣伝して、客を呼び込む!!完璧な計画ではないか!!


 時は流れた。高齢だった後藤知事がプロジェクト実行中に逝去。これは、県民にとってはとても悲しいことだった。第二都市の財政難を必死で救おうとした彼。実際、それを行うための金はめちゃくちゃ抑えられていた。しかも、その間はもと俳優、声優、芸人などのエンターテイナーとして働いた時に使った金を市民に配布したり、新しい仕事を提供したりと市民のために尽くした。それが県政に反映し、大きな支持を受けた。


新しい知事は、冨波基次とばもとつぐという名前。冨波は国会議員を経験したことがない政治家だった。だが、今回の選挙では後藤前知事のプロジェクトを大幅に拡張、しかも費用を驚くほど抑える案を出し、具体的な計画を分かりやすくブログで紹介していた。政治家として立候補したのは彼だけだった。おかげで大差をつけて、当選したのである。

「それでは、早速会議を始めよう。今日の議題は、『焼き鳥交通プロジェクト』でバスの外見とコスト、実現できるかについて話し合う」


 俺たちは、乗り物の外見をまずは考えることにした。前の知事は、はっきりとした乗り物の姿を公開せずに、逝ってしまった。だから、考えるのは俺に決まった。40代の若い発想を最大限に生かすべく、まずは特産物などから考えることにした。


うちの町の特産物と言えば・・・・・?真っ先に思い付いたのは、鶏だ。うちの鶏肉の品種はとてつもなく美味い。いやいや、本当に肉について色々調べてみたら、とんでもないランクが表示されてしまったわけだ。


で・・・・・?鶏肉をモチーフにすることは分かったが、果たして、どの鶏肉料理にしよう。唐揚げ?チキン?鶏そぼろ?

これは難しい問題だが、ふと気が付いた。うちは林業が盛んで、古い時代は薪もたくさん作られていた。城のようなものはないが、そういう歴史の記録はたくさん残っている。


明治時代にこの県でめちゃくちゃ流行っていて、今でも流行ってるのが『焼き鳥』だ。山が多く、アウトドアできる場所がたくさんあるし、炭や薪は特産のものがたくさん。野菜もたくさんとれる土壌がある。焼き鳥作りには適していたわけで、週に4回は焼き鳥を食べる家が多かった。たま~にやってくる観光客は焼き鳥店の食べ歩きをしていた。


――これだ!!!!


 それからは、様々な試行錯誤が続いた。まずは、焼き鳥型のバスを作る計画を立てたが、そこの方まで焼き鳥にすると、タイヤをどうつけるかなどが問題になってくる。また、それに使う重みと、バランスなど、様々な壁にぶち当たった。それらを解決すると、今度は窓をどのような感じに付けるかという壁に遭遇。そして、焼き鳥の串はどのように表現するかという新たな壁・・・・・。

「死にそう」

「頑張りましょう!!絶対できます!!」

諦めかけたときには、みんなが励ましてくれた。


壁、壁、壁にどんどん当たって。もがいてもがいてもがいて頭をひねった。そして、ついにバスが完成したのだ!!いくつかのバリエーションが街を走ることになった。

『焼き鳥交通』の第1のものが完成した!!

パチパチパチパチ

ヒューヒュー

「知事最高です!!」

「ありがとうございます!!」

県民にはたくさん喜ばれた。

また、バスの製作途中には、県の中に『焼き鳥交通課』ができ、バスを運行し始めると、『県営焼き鳥交通Group(株)』という会社が誕生した。株主はほんの少しだけだが、備蓄の金などでなんとか行けそうだ。


バスは大好評だった。そのバスをどんどんカスタマイズした。より快適に移動できるユニークなものになるように。そして、新しいバスもたくさん生み出した。

代表的なものは「デフォルト」、「キャンピング」、「ステイホーム」、「焼き鳥Pro」などなど、様々な焼き鳥が生まれた。


 次は、新しい事業だ。鉄道である。現在この県にはJRみたいな大きい会社はなく、小さなローカル線しか走っていない。

で、まずは線路を頑張って頑張って作った。図面をもとに、作ると、全線開通まで、およそ8年半かかった。金は会社と、市の備蓄、いくつかの会社からの寄付で持ちこたえた。


線路を作ってる間、俺たちは車両を必死で考えていた。エンジンをつける場所、車輪をつける場所、重さとバランスなどバスで起こった問題はもちろん、パンタグラフ、運転席、シートの材質、電車の窓枠、連結部分、車両自体の材質、串をどう生かすかというバスよりもたくさんぐらいの問題に直面した。だが、バスと同じように1つ1つ解決していった。


線路が完全に完成してから約半年後に、車両も完全に完成した。特徴は、パンタグラフがないことだ。何となんと、水素で動いている。だから、パンタグラフの問題はなくなった。まあ、その分モーターの問題が発生したが。そして、串の部分を車両の展望台にしたことだ。そこから後ろの景色を眺めることができる。また、ミニ焼き鳥資料館的な車両もある。

「現実的で、地球にやさしく、超ユニークだろう?」


それからまた半年後に、運転開始。県民にとっては大きな交通網の完成で、大いに喜ばれた。その際に、ある車両に乗車すると、他の乗客からサインを求められ、すごくお礼を言われた。愛されているのだなぁと思った。


 これで、県内の交通網は完成した。焼き鳥タクシーという新しい乗り物も開発した。タクシーはバスを応用したので、約1年後にすぐ運行を始めることができた。


なら、次は県外だ。日本国内はもちろん、世界ともつながるべく、新しい交通手段を出すのだ!!そのためには・・・・・船と飛行機を作る!!!!


まずは、船から取り掛かることにした。船の外見がまず問題になったわけだ。なぜかというと、船の底の部分にバラスト水を入れたりするわけだが、それに客室をたくさんつけるとなると、船体がめちゃくちゃ太くなる。てなわけで、焼き鳥を出来るだけ長くした。客室を積み上げるのではなく、横に伸ばすことで外見のバランスを良くした。

それからは、バラスト水問題、客室のこと、乗り降り口、便数などを話し合った結果——できたのだ!!


「これで、焼き鳥が世界にも羽ばたくことができる!!」

焼き鳥型客船を使うことにより、多くの県民が安く気軽に、そして楽に県外に移動することが可能になった。長い間閉じ込められてきた県民にとってはこれは神様的なものだった。

「冨波知事バンザイ!!」

「冨波知事バンザイ!!」

俺、天才??


 そして、最後は飛行機だ!!飛行機は出来るだけ機体を軽くしなければならない。ひらすら軽くすることが重要になったわけで、串の部分を削った。これは痛かったが、串がいらない焼き鳥、つまり手軽さを意味するという解釈にした。

そして、翼をどのようにするかだ。焼き鳥の機体に翼をつけるとなると、どう考えても不格好になる。これはなかなかまずい。様々なものを考えて、県民からも意見をたくさん聞いた。その意見をみんな入れて、専門家に何度も持ち出した。


飛行機計画開始から10年が経とうとしてるときに、ついに挫折してしまった。これは一度持ち越しにして、今できているものをもっと発展させることにした。


「俺は・・・・・なんで挫折したんだ!!」

知事室の立派な木の机を思いっきり殴る。

「いやいや、立派にやりましたよ」

「だが、諦めますなんて言ったら面目が立たん!!」

すると、外からは歓声が上がっていた。

「大丈夫」

「知事は十分やってくれた」

「そんなときもあるさ」

励ましの声が俺の耳に痛いほど届いた。

「ありがとう!!ありがとうございます!!私はこれで諦めません!!何度も何度もチャレンジします!!なのでみなさん、これからもよろしくお願いします!!」

窓の外の集団に向けて思いっきり叫んだ。

ワァァァァァァァ!!!!!!!!!!!

大歓声が響いた。


 この県は焼き鳥計画からどんどん発展して、客は大幅に増えた。ユニークな交通手段がある県として、日本、そして世界にも知られることになった。そのことは、当たり前のように思えるがそうではない。このプロジェクトができたのはとっくの昔のことに思えるが、そうではない。本当に最近に、1人の若い知事が全力で取り組んだものだったのだ。彼に大きな拍手を。焼き鳥交通は今日も世界を元気に動いている。あなたも、どこか探してみてはどうだろうか?・・・・・by冨波知事

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