老ウサギと命の花

まず88歳のウサギという設定がファンタズム溢れていて素敵だなと感じました。そして冒頭にわざと(…なのか、そうではないのか)置かれている『雄々しい』の形容詞。これは普通、文字のイメージから男性に対して使う言葉だと思われがちですが女性に対して使用しても何らおかしくはありません。作中でイスタン(88歳のウサギ)の性別は描写されていませんし、老人言葉なので特定し難いのですが、そこもまた想像の海に入る助けとなっています。さて短編なので話自体はコンパクトなのですが、作者の言いたい輪廻転生、再生などの要素がブランディの花(ブランデー色の花。バラなどの品種改良種とでも思ってください)というアイテムを出すことでしっかりと描かれているのも秀逸なところ。KAC作品は基本的に読まないのですが、何気なく覗いてみたら宮沢賢治に似た世界が待ち受けていて驚きました。読ませていただいて有難うございます。

※ フランス語でブランディ(ブランデー)はeau-de-vie。直訳すれば「命の水」