チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【37】呪いの台車【なずみのホラー便 第125弾】
なずみ智子
呪いの台車
【問題】
今年で勤続年数二十ン年となるレミ子さんの会社には、”呪いの台車”なる代物がありました。
普段、その”呪いの台車”は会社の倉庫にしまってあるのですが、新入社員が大きな荷物を運ぶ際に、ついうっかり倉庫から出してしまいました。
案の定、呪いの台車はエレベーターに割り込んで乗り込んだのを皮切りに、ガラガラと会社内を走り回ったあげく、三人の女性に次々と体当たりを食らわせました。
暴走する”呪いの台車”を数人がかりで取り押さえることができましたが、その後、なぜか勤続年数の長さを買われたレミ子さんが、一人で”呪いの台車”を倉庫に封印、いえ戻しに行くこととなりました。
さて、これにて一件落着……かと思いきや、またしても騒ぎが勃発です。
レミ子さんの悲鳴を聞き、駆け付けた社員たちが見た光景は、階段下で倒れて呻いているレミ子さんと彼女の近くに転がっている”呪いの台車”でありました。
さて、レミ子さんは”なぜ”このような目にあったのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 今回の問題はいったい何なのでしょうか? そもそも、”呪いの台車”って何ですか? ……色々と突っ込みどころ満載です。でも、まず問題文ラストの状況をちゃんと把握したく思います。レミ子さんは、”呪いの台車”が原因で階段から転落したのでしょうか?
チエコ先生 : YES。レミ子さんは”呪いの台車”に体当たりを食らったあげく、階段から転落してしまったの。なお、”呪いの台車”自身も一緒に転落してしまったけどね。
キクちゃん : うーん……問題文を読むと、この”呪いの台車”はレミ子さんだけでなく、他にも三人もの女性に体当たりを食らわせていますよね? 女性に何か……恨みというか、怨念を煙のごとく燻らせている台車だったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 女性に怨念を抱いているわけでなかったんですね? それなのに、女性たちに次々と体当たりを食らわせるなんて解せません。本件の最大の被害者と言えるであろうレミ子さんは階段から転落までしているのに……。
チエコ先生 : 悩んでいるキクちゃんにヒントをあげるわね。”呪いの台車”が先に体当たりを食らわせた三人の女性について、ゴシップ雑誌風にザッと紹介するわ。
・ 一人目
最近結婚したばかりの彼女は、さらに艶っぽくなったと評判!
秘書課のO絵さん(28才)
・ 二人目
期待のニューフェイス! 今年一番の可愛すぎる新入社員!
総務課のH子さん(22才)
・ 三人目
会社一のメガネ美人と言えば、やっぱりこの娘(こ)!
経理課のM美さん(25才)
キクちゃん : ………個人の好みは多々あると思いますけど、この三人の女性はいずれも男性社員からの人気が高そうですね。全員二十代でもありますし。はっ……! もしかして、”呪いの台車”に宿っていた心の性別は男性でしたか?
チエコ先生 : YES。
キクちゃん : ”呪いの台車”の体当たりの理由は、レミ子さんと前述の三人の女性では違っていましたか?
チエコ先生 : YES。
キクちゃん : ……ということは、若くて魅力的な女性だけを狙って、体当たりを食らわせていた”呪いの台車”を勤続年数二十ン年のレミ子さんが諫めたんですね。
チエコ先生 : YES。
キクちゃん : そして、”呪いの台車”と諍いになり、レミ子さんは”本気の”体当たり”食らったあげく、階段から転落してしまったんですね?
チエコ先生 : YES。正解よ。
キクちゃん : ……犬や猫に体当たりというか、じゃれつかれたなら、柔らかいし温かいし、何より可愛いです。でも、台車に体当たりされたら痛いだけです。というよりも、人間の男性が同じことをしたなら、明らかな痴漢行為ですよ。最低な”呪いの台車”ですね。
チエコ先生 : そうよ。レミ子さんも呆れていたのよ。倉庫に台車を封印しに行く際、「あんた、いい加減にしなさいよね。それも、若くて可愛い娘(こ)ばっかりに。あんたが人間なら告発、もしくは逮捕されているわよ」といって、台車の取っ手をピシャリと叩いたの。それに対して、”呪いの台車”は「うるせえ! このお局ババアが!」と言わんばかりに逆上して、レミ子さんに襲いかかってきたの。そして、揃って階段から転落してしまったのが本事件の真相よ。
(完)
チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【37】呪いの台車【なずみのホラー便 第125弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます