ショートコント
西紀貫之
ショートコント
いっしょに「ショートコント『コメディ』」
相方「お米でキャンディ作ったんだけどさ」
おれ「
……ショートすぎるだろ! なんだよ米ディって。
だいたい米なんて炊いたうえで唾液とかの消化酵素と反応して麦芽糖にならんと甘みなんて感じない上に「さいしょから麦芽糖使えよ!!」ってもう筆を投げる。
筆というか鉛筆拾い直した。
いっしょに「ショートコント『コメディ』」
相方「お米を作った田んぼの土を丸めて固めたんだけど」
おれ「
なんで泥喰うんだよ水田の泥喰うなよ! きめ細かくで焼き物にちょうどいいものになるからって口に含んで粒度確かめてた美食倶楽部オーナーとかいたけど喰ってねえよ。甘みなんかねえよ「というか喰ってないしキャンディかけらも説明されてないし単なる語呂合わせじゃねえか!!」ってもう筆を投げる。
筆というか鉛筆拾い直した。
いっしょに「ショートコント『コメディ』」
相方「お米を作ってる男性をアン、女性をエンヌと略すのはどうだろう」
おれ「(なんかいいかんじに「『コメディ』とるなよ」てきなかえし)」
米から離れろよ! 農家は別にコメディアンでもコメディエンヌでもねえし「って、パリジャンとパリジェンヌってフランス語だけどコメディアンとかもあっちの言葉で英語じゃねえのか」って筆を置いて辞書を読む。
筆というか鉛筆を手に取る。
いっしょに「ショートコント『コメディ』」
相方「お米を
あいつならなんて書くかな。なんていうかな。なんてネタを俺にぶつけて反応見ようとするかな。俺をネタでひっぱたいて、その刺激で俺がならすツッコミ音を観客に訊かせて「どっと笑わせるんだよなあ」って、鉛筆を耳にかける。あいつのクセだ。
鉛筆を手に取る。
いっしょに「
もういっしょにやれないのに。俺は相方のノートに残ったいちばん最期のネタを完成させてやりたかった。ひっくり返したらコメディになるってのはあいつの弁、あいつはいつも「喜劇は悲劇の反対だってな」って、ノートの上に鉛筆を置く。
人が来る気配に、もういっかい筆を執る。
「おつかれさま。……なにしてんの?」
「死んだ相方の残した最期のネタを完成させようと頭を絞ってるの」
「俺いつ死んだの?」
ショートコント 西紀貫之 @nishikino_t
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