他の人には見えないものが見える、視えてしまう少年康介君。
皆には見えないそれが「幽霊」と呼ばれるものだと気づいた頃には、彼はその力の為に嘘吐き呼ばわりされるようになっていました。
何故信じてもらえないのだろう?
なぜ自分だけがそうなのだろう?
そんな気持ちを抱え彼が歩くのは夕焼け小焼けの日暮れ時。
母親と手を繋ぎ、帰り道を進む彼の元に現れた一人の青年。
彼は半分透けた姿で康介君へと声を掛けてきて……。
大人が子供の手を繋ぐのは危ない場所へ行かないように。
そして大切な人を導くために。
そうして繋がれた先に康介君は、そして私達は何を見るのでしょうか。
きっと繋がれた手の様に、温かい想いがそこにはあることでしょう。
スイミングスクールの帰り道。目に見えてはイケないモノが見える幼い康介と母親は、茜色の夕焼け空の下に家路についていた。
その帰り道、ふと前方から見知らぬ青年に、康介は声を掛けられる。
見知らぬ青年は、優しく康介に話し始めるのだが……実は……。
―—キーワードは「夕焼け小焼け・六時のチャイム」——
本作から、母親が息子をいつまでも優しく守ろうとする姿勢が伝わってきます。
読者の心を激しく揺り動かしてしまうような、切なさと遣る瀬無さが交差する物語です。
夕焼け小焼けの茜色の空の下。母親と手を繋ぎながら帰る光景は、誰もが持っている思い出の一コマの情景ではないのでしょうか?
ふと目を閉じると母親の愛情にふれ、目頭が熱くなってしまいました。