おれが第六感について語るときに俺がルビを振ること

おれが第六感について語るときに俺がルビを振ること

　おれ（馬鹿）、第六感（第六感）みたいなものがあるんだ（なんてある訳がないだろ）。

　海外の映画であったでしょ（シックス・センスだよ）？ サスペンスとかよく撮る監督の（M・ナイト・シャマランだ）。

　丸坊主の強そうな俳優が出る（ブルース・ウィリスだろ）。

　あれみたいに幽霊が見える訳じゃないんだ（そりゃそうだ、これはホラーじゃないぜ）。

　ただ、何ていうか（無駄に尺を稼ぐなよ）……虫の知らせかな（そう来たか）。

　そういうものが聞こえるんだよ（冗談だろ、俺が虫だってか？）。

　物心ついたときからずっとなんだ（俺はお前がガキの頃からずっと見てきた）。

　学校の国語のテストのとき（監獄以下の学校のクソ教師が）、わからない漢字や（ガキには難しすぎる）四字熟語が出ると（試験を出すから）、例えば（例えば）『一蓮托生（いちれんたくしよんう）』とかさ（とかな）。

　そういうとき（ムカつくじゃないか）、答えを囁く声が聞こえるんだ（鼻の穴を明かしてやりたい）。耳元で、じゃないな（だから教えてやるんだ）、頭の中で（この俺が）。

　そのお陰で成績はよかった（今じゃお前は進学校の特待生だ）。

　最初はガリ勉って虐めてくる奴もいたけど（全く手のかかるガキだよ）……。

　そのときも第六感が働いたんだ（俺がいなきゃどうなってたか）。

　今日は虐めっ子が待ち伏せしてるとか（通学路のクソガキどもを見つけて）。

　下敷きや上履きがどこに隠してあるとか（うさぎ小屋だの体育館の屋根だのまで漁って）。

　全部教えてくれたんだ（教師に告げ口もしといたからな）。

　何でだろうな（何でだと思う）。わからないけど（教えてやろうか）……

　守護霊なのかもしれない（主人公補正ってやつさ）。

　馬鹿みたいだよね（お前はこの小説の主役だ）。

　何でおれなんかを守ってくれるのか（映画のナレーションみたいに）わからないけど（物語が進むよう）。

　心当たりはあるよ（導くのが俺の役目だ）。

　実はおれ（は？ 何？）、双子だったんだよね（急に何言い出す）。

　生まれるとき（ふざけるな）、お兄ちゃんは死んじゃっててさ（これはお前の物語だ俺のじゃない）。

　ごめん（ジャンルを）、急に暗い話して（ホラーに変える気か？）。

　昔、母さんにこの話をしたんだ（俺が誰かなんてどうでもいい）。

　そうしたら、お兄ちゃんが（いいか、俺が働くのは）見守ってくれてるんじゃないかって（物語を順当に進めるためだ）。

　自分が生きられなかった分も（舞台の高校に進学させるため）

　弟が楽しく生きられるようにって（虐められて捻くれないように）

　助けてくれてるんじゃないかってさ（全部お前を主人公にするためだ）。

　だったら、すごいよな（お前は自分の話をしろよ）。

　お腹の中にいたのは同時なのに（観客は主役の俳優を観たいんだ）おれよりずっといろんなこと知ってるし（ナレーターなんか誰も気にしない）。

　本当は自分だって生きたかっだろうに（中高生向けの明るい学園恋愛ものだぞ）、

　恨んだり不幸になるよう仕向けないで（お前は馬鹿で優しくて幸せでいればいい）、

　おれのことずっと助けてくれてるんだ（鼻垂れのガキが好む話だけしてくれよ）。

　うん（俺は）、上手く言えないけど（そういう物語を）、

　お兄ちゃんなんだと思う（進めてるんだよ、お前を主役に）。

　怖かったり（怖がられて）、気持ち悪くないのかって（気持ち悪がられるぞ）？

　うーん（こんな話）、そうは思わないかな（聞かされてどう思う）。

　確かに不思議だけど（お前の目の前に）、悪いことはしないし（誰がいると思ってる）。

　むしろ（もっと他に）、いいことばっかりだよ（言うことがあるだろうが）。

　だって（何だよ）、お陰で受験も合格して（いちいち回りくどいな）、志望校に入れてさ（はっきり言えって）

　……きみと（お？）、同じクラスになれたし（よし、それだ！）。

　あっ（何だよ）、ごめん（クソガキが）。

　話に付き合ってもらってる上に（やっと話が本筋に入った）変なこと言って（これでプロローグだ）。

　でも（本当に）、会えてよかった（手がかかる弟だ）。

　ほら（何？）、体育祭でおれがちょっと怪我したときに（今のは訂正、何でもねえ雑音だよ）、絆創膏をくれただろ（そんなことより注目しろ）？

　ずっとお礼したかったんだ（ふたりの関係の始まりだ）。

　コーヒーくらい奢るからさ（よし、いいぞ、その調子だ）。

　え（今度は）、何（何だよ）？

　ああ（あー）、確かに（あれか？）。何で体育祭のときは（テントの支柱が急にが倒れて）第六感が教えてくれなかったんだろう（側にいたお前が腕を擦りむいたやつか）。

まあ（そりゃ）、大した怪我しなかったしね（大事な演出だったからなあ）。

　もう第六感が働かないのかって（とにかく始まったばかりだからな）？

　ううん（まだまだ）、そんなことないよ（死ぬほど誘導してやるさ）。

　今日（ああ）、寄り道するつもりなかったんだけど（どこに話が飛んでいくかと思ったが）、「こっちの角を曲がったらきみに会える」って聞こえた（ひとまずこれで）、って言ったら（何とかお前の物語は無事）……信じる（進みそうだ）？