心と部屋
かわき
心と部屋
「自分の心って、自分の部屋の環境とリンクしていると思うんですよね」
最近髪を染めたと言い赤髪になった彼はタバコの白い煙をモクモクと吐き、その煙に乗せるように言った。
「どうしてそう思うの?」
私は彼からこのような言葉が出てくるとは思わず、少し動揺する。
「どうしてって、それはね僕の考えなんだけど」
彼はまたタバコをくわえ、そしてまた、白い煙と一緒に乗せて言葉を吐く。
「常に平常心でいられる人って、そうそうにいないと思うんです。いたらその人、何かのプロかなんかですよ。平常心でいられるってことは、何かに強い人なんです。ほら、家族の大黒柱って聞くとお父さんのような強い人を想像しますよね? あれです。何かを基準にした平均的な力を加えても、そう簡単には崩れないような強い芯。お家だって、震度7とか、もうどうしようもないくらいの揺れが来ないとそう簡単には崩れないでしょう? そういう感じで、常にいかなる時も一定の力を出し続けるなんて、そう簡単なことではないんです。そして──」
彼は一人でよく喋る。そして、よく言葉に迷う。自分で言って自分で迷うなんてバカみたい、なんて思う。でも、彼が言いたいことはなんとなくわかる気がする。
「──だから、こうなるんです。って、あれ.......? 僕今どんな話題してましたっけ」
「んーもう。心がブレない人は強いんだーってところでしょ」
「そうそう、それです。ありがとう。それで、そういう人って、自分の部屋が綺麗なイメージしませんか。ほら、例えば清楚系イケメンの人って、普段から清楚って感じのことしかしてなさそうじゃないですか。それって、自分の部屋の姿が基礎を作っていると思うんです。もし清楚系の人の部屋がヘビメタな感じの部屋だったら、意外ってなりますよね。つまりその人って、情緒不安定だと思うんです。だって、見た目清楚なのに中身はヘビメタって、疲れると思いませんか?──」
それからも彼の話は続いた。彼は例え話を多く入れて人にわかりやすいように話してくれる。だけど全てを例え話にするせいで話は長くなって聞き手は途中下車してしまう。でも私はそんな彼の姿が良い。と思う。
彼の話は確かに、と思う。彼は「薬物使っている人って枕の中身をぶちまけている感じしませんか? つまり、荒れているんです、部屋が。そして中身が」と言った。これだけで彼が言いたいことがわかる気がする。だけど彼は例題を終わらせない。この後も、同じような例題を何回か話し続けた。彼が話している間に、茜色の街はすっかりと街灯の光で照らされていた。
彼はタバコを吸い殻皿に入れ、背伸びをした。
「もう言いたいことは言った?」
「言ったよ。なんだか疲れた、今日は僕が夕飯当番だったよね、何作ろうかな」
「君はさ、どんな部屋に住みたいのさ」
「え、僕はね、君がいる部屋かな」
心と部屋 かわき @kkkk_kazuya
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