第07話 予想外・想定外は、単なる無知が原因だ。

 ある事ない事が誇張されて報道された事件当時。定職に就かず異様な生活を送る渦中の家族の異様さ。40件を超す保険の掛け金は、毎年2000万円を超えていた。異常な高額な保険料を保険会社や消費者金融から借り入れて払い続け、高額な保険料を得ると借金の返済や保険料の支払いに充て、残った分で不動産や高額な物を購入していた。平成7年以降は、年間収支1億円から2億円を超える保険金収入を中心に成立させていた。

 毒物カレー事件は、保険金詐欺の事件に摩り替る。保険金詐欺は、保険金搾取の為の犯罪に対し、一文にもならない無差別殺人と同列で語られる異様な事件となる。

 用意周到が習慣となっていた益美にとって、油断・軽視・突発的に世間の注目を浴びる行動を行うとは考えにくい。マスゴミへの対応も当初は良好だったが、日常の生活の盗撮や子供達への取材などから悪化していったもので、社交的で保険外交員として優秀だった益美の変貌にも理解の範疇にある。奇行が取り沙汰されるのも事件が起き、取材を受けてからでそれ以前に近所とのトラブルも殆どなかった。


 初動捜査のミスが複雑怪奇な事件に仕立てていく。当初は、青酸化合物から青酸中毒となり、ヒ素によるものとなる。激高が動機とされるなら、不穏な空気やあからさまな行動が見られたはず。関わった者になら分かるはず。自分が関わることが原因で事件に発展したと知られたくないために隠蔽したのか?それは、捜査関係者やマスゴミの取材からも感じられない。激高とするならば個人でなく無差別だったのか。個別行動が難しいと考え上手くいけばその個人を攻撃できる。それは余りにも動機や犯罪行動としては成立しにくい。無差別ならなぜ、すべての鍋にヒ素を入れなかったのか。その引き金となるような村八分のような疎外を受けていたのか。事件の被害状況と犯罪の動機に大きな溝がある。

 周りの目を気にしながら保険会社を騙し、収益を上げていた。その手口から真逆の大胆な行動を衝動的な感情論で解決できるのか。ヒ素の入手にしても同じものがシロアリ駆除を目的としたものであり、森家を含む7件の家にもあった事。入手先が同じであり、特定できない事。証言の裏付けが杜撰すぎ確固たる証拠として不十分過ぎる事。被疑者が否認し、確固たる状況証拠がない事。森益美だけが毒物を入れられたとする根拠が余りにも乏しい事。発見された証拠品が全く決め手にならない事。事件後、毒物が入っていた鍋だけが奇麗に洗われていた事。これは、その鍋に毒物が混入されていたことを知っている者にしか出来ないにも関わらず、いつ洗われたのか、誰が洗ったのかが争点になっていない事。これは幼い子供には出来ない。益美が洗ったとすれば、その時間前後に確認されているカラオケ店での確固たるアリバイは説明できない事。科学鑑定が二転三転するばかりか鑑定の精度に疑いがもたれる事。上げればきりがないと言う程、事件の大きさに比べて捜査が脆弱過ぎる異様な事件となる。

 犯罪心理学的にも整合性が取れない。世田谷一家殺人事件のように調べる側が複雑にしているだけでは。犯人は、特殊訓練経験者などの大層な者でなく、精神的に善悪の境界線を持たない欠乏者であったり、外人を差別するわけではないが、目的のためには手段を選ばない資質。日本人の性善説を前提に考えたことによって混乱を呼び込んでいる。非人道的なアジア人の犯罪と考えれば、行き当たりばったりで証拠を多数残しているのも、ゴミを捨てない、寧ろ拾うことを良しとする国民が、そうしない異国人を理解せず、複雑にしたものであり、本質は極々単純な金欲しさの無計画な事件であることは否めない。

 米国では銃乱射事件が少なくない。特に学校で学生主犯で学生が犠牲になっている。銃社会じゃないから日本の国民には理解しがたい、という者もいるだろう。現実的には、理解できない異人が多く日本にも存在する。であれば、犯罪の動悸や方法もこれまでの常識外でみるのが妥当だ。単純なものに性善説の中で考えられる憶測・推察が塗りたくられ、事実を見えなくしていないかの検証は必要だ。捜査機関が職務を遂行するにあたり、マスゴミの誘導による世間の目に晒され、早期解決を余儀なくされ、都合のいい事由に脚光を当て、不都合な影となるもの除外し、創作に邁進する。

誤った道筋も訂正できないほどに。威厳を全否定する勇気はそこには存在しない。権威を守る事に躍起になる者にとっては、意地でも誤認であっても正当化し、少数の犠牲など考えもしないのが現実だ。人命は地球より重いなど、安堵のための麻薬のような物であり、そもそも地球がなければ人命もない事実から目を背けているだけの虚構以外の何もでもない。一を殺めても大勢を救うのが現実だ。まさに、この事件に当て嵌まる構図だ。ただ、決着の付け方が、大勢の不安を払拭するため個人の犠牲は止む終えずとしている点が問題なのだ。

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