アシナガバチとの、ささやかな交流がもたらしたもの。

 このお話は「無職だった『私』が次の就職先を見つける間、実家で家庭菜園をしていたときに、アシナガバチと出会ったこと」から始まります。

 アシナガバチは「蜂」ですし、刺すこともあるので危険ではあります。ですが、「アシナガバチはあまり襲うことがない」と知った主人公は、干渉せずに過ごしていました。
 その行動が良かったのか、アシナガバチが主人公のことを「危険ではない」と判断したようで、「私」が庭にまくために用意した水瓶の水を飲むようになるのです。

 心を通わせるとまではいかないまでも、何となくお互いのことをそれなりに意識しながら生活していたある日のこと。
「私」の庭に、営業マンが訪れます。あまり印象のいい人ではないのですが、中々立ち去ってくれません。どうしたものかと思っていると、あのアシナガバチが来て――?

 それほど長くはない文章ですが、きちんと起承転結があって、よい物語を読んだという読後感がありました。「アシナガバチ」(=虫)という生き物の生き方を尊び、何も考えていない人間の愚かさを嘆くことができる人は、何かしら気持ちを動かされるのではないかと思います。

 気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。