長尺ものを扱う難しさ

 長編短編のいわゆる「話の尺」というものではなく、振るう武器の長さについて。
 奇水先生は剣術の研究に深く、武蔵はじめとする二刀にも造詣深く、こういったエピソードの抜粋的話の構成のうまさは言うを待たない。

 肝となる長尺、文中では総長4尺(≒120cm)から5尺(≒150cm)という長さ。柄はおそらく20cmチョイ~1尺(≒30cm)くらいだとしても、刃長1mを越える物干し竿軍団である。
 対する主人公は、二刀流。ふつうの竹刀と、脇差し長さの竹刀である。
 勝負の肝もまた話の肝である尺なのであるが、長い武器の弱点は、そのまま長いことにある。振るう自分の中心から先に行けば行くほど、強い力が必要になる。つまり、弱い力で逸らされてしまうのだ。ここに単純な長尺刀の弱点がある。
 返していえば、短い(とはいえ脇差)竹刀の強みは自分の中心に近い。力の多くが切っ先に乗る。これで長尺をふわりと乗り逸らすのだ。片手といえども、乗ることの強みと拍子のうまさで、主人公は長尺軍団をポコポコと破っていく。

 さて、いざ長尺軍団の親玉である男と対決だ! そのときに…………。
 話の結末は自分の目で確かめてほしい。
 おじさんとのやくそくだ。