そしてだれもいなくなった

 多頭竜の倒し方を知っているか。
 そもそも多頭竜って何だ? その生態を、その背景を、その弱点を、知っているか。

 まず登場人物の説明からストーリーは始まる。やたら登場人物、というか、似たような名前が連続して登場される。その時点でもう退路を断たれたようなものだ。
 どの名前が誰で何番目が誰だかわけがわからなくなりそうだ。それがいい。もう術中にはまってるって奴だ。

 謎を読み解く暇もなく展開される名前たちの殺戮。用意された謎と手がかりが理解するよりも早く消滅していく。
 にとうりゅうの言葉をテーブルに引き出すためだ。やがて解答へと導かれ、読み手はようやく気付く。そうだ。このために彼女だけ名前が似ていないんだ。

 パズルを紐解くミステリーのような読み応えのある短編です。疑うことなく、迷うことなく、するする読み耽るとしましょう。